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世界は映画を見ていれば大体わかる#21

カルロス・ゴーンの逃亡シーンが映画よりもスリリング! 『カルロス・ゴーン 最後のフライト』がU-NEXTで配信

敏腕経営者として栄華を極めたが…一転して逮捕へ

 離婚に至った理由だが、彼はとにかく忙しいってことだ。フランスで月の1/3、日本で1/3、残りの1/3を外国で過ごす。仕事のためだ。あらゆる国のあらゆる場所で政治家や実業家と会い仕事の話を進める。フランスでは上流階級の人間と会い人脈をつくらなければならないと言われても、そんな時間はないと飛行機に乗ってしまう。

 馬車馬のように働き会社の経営を黒字にしてもゴーンはいつまでもよそ者扱いされ、「横柄」「傲慢」と陰口を叩かれる。そんなことは一切気にせず仕事に邁進するゴーン。それが自分の足元を掬うことになるとは知らず……。

 18年、ゴーンはいつものように海外の仕事から帰ってきたところを羽田空港で逮捕される。容疑は金融商品取引法違反。ゴーンは10年から14年まで5年間に受け取る報酬が実際は計約100億円だったのに、有価証券報告書には計約50億円と過少記載していた。実際の年間報酬は約20億円だったが、報告書には約10億円と記載するにとどめ、差額の約10億円は退任後に受領するということになっていた。

 これは果たして逮捕されるほどのことなのか? ゴーン自身も「退任後の報酬の支払いは確定していないのだから、記載義務はないはず」としており、逮捕は行き過ぎとも思える。だが東京地検特捜部はゴーンを逮捕し、勾留期限を超えても延長、さらに同じ容疑で再逮捕(10~17年度の連続した事件を、前半の5年と後半の3年に分けるという無理やりなこじつけで)。保釈まで3カ月かかるという異例も異例の事態。

 逮捕の背後には「ルノーと日産の間に不信感が生まれたことにある」と、ゴーン自らが分析する。

 15年、フランス政府はルノーの持ち株比率を上げる。大株主であるフランス政府はルノーを牛耳っており、しかもルノーは日産を統合という名目で子会社化しようとしていた。日産の幹部らがルノーに会社を乗っ取られてしまうのでは? と、疑惑にかられたのも無理はない。なにしろルノーと日産、両方のトップは同じ人間なのだから。

 だがこの統合に反対していたのは誰あろう、ゴーンだった。

「国や特定の文化への帰属意識が日本人は非常に強い」

 個々の会社が独立性を持つべきだと訴えていたゴーンを、日産の幹部たちは信じなかった。

 日産は会社を守るためだけならゴーンを解任すればいいだけだが、そうすればゴーンはルノーに帰ってしまい、ルノーの元には彼らが保有する日産株45%が残される。彼がルノーに帰れないようにするためには評判を貶め、戻れないようにするしかない。

「すべては私を貶めようとした陰謀なのだ。明日、記者会見を行い、すべてを明らかにする」

 保釈を勝ち取ったゴーンは反撃を宣言するが、声明発表後の翌日に再逮捕されてしまう! 2つの因果関係は明らかすぎるほど明らかだった。

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