キングオブコント2021を「ド頭すごい出だし」にした、伝説の前説芸人
#テレビ日記
松本人志「もうあんまりウケんなって思ってまうねん」
2日の『キングオブコント2021』(TBS系)は、空気階段の優勝で幕を閉じた。それにしても、10組中すべての組が面白いネタを披露していた今大会。審査員を務めていた松本人志が、途中で「すごく矛盾してんねんけど、もうあんまりウケんなって思ってまうねん」と言い、飯塚悟史(東京03)が「今日ほど家で見たかったですね」と口にするなど、すべてのネタが大きな笑いをさらっていく展開に、審査する側がうれしい悲鳴を上げる展開も見られた。小峠英二(バイきんぐ)は「伝説の回ってなるぐらいの、回なんじゃないか」と評した。
これほどレベルの高い大会になったのは、もちろん、ファイナリストとなった芸人たちのコントが面白かったからに他ならない。また、刷新された審査員のコメントの納得感も、見ている側としては番組の面白さを加速する要素になっていたように思う。
もう少し細かく振り返ってみると、トップバッターの蛙亭のネタが爆発したのが、大会全体を盛り上げる大きな要因だっただろう。
蛙亭のコントの舞台は研究所。研究員のイワクラが「今日も変化なしか」とつぶやいていると、ガラスの割れる音とアラート音が鳴り響き、実験体の脱走を告げる緊急アナウンスが入る。彼女の目の前に現れたのは、全身ヌルヌルの男。中野周平が扮するそのヌルヌル男は、実験で作り出された人工生命体(ホムンクルス)だということが後にわかる。
で、興味深かったのは客席の反応だ。客席はそのヌルヌル男の登場を笑い声で迎え入れた。そして、男が胸を2~3度叩き、口から緑色の液体を吐き出すと、少し悲鳴があがりつつも拍手笑いが起きた。客席がその気持ち悪さに引いてしまってもおかしくないところだ。特徴的な声も含めた中野の存在自体の面白さも奏功しているのだろうが、それにしても、という気がする。ネタを見終わった審査員の山内健司(かまいたち)も、次のようにコメントした。
「もっとウケてもいいのになって思うことはあるんですけど、今回初めて、もっと引いてもいいのになって思うぐらい、ド頭すごい出だしやった」
今回の大会、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)などと同じく、前説はバイク川崎バイクだったらしい。さまざまなものを「B・K・B」のあいうえお作文にして「ヒィーーア!」と叫ぶあのピン芸人だ。そんな彼が、大抵のものは笑う驚異的な客席を前説で作り上げてしまったということだろうか。
以前、バイク川崎バイクは、同じくM-1などで前説を長年務めてきたくまだまさしの言葉を引きながら、前説についてこんなことを語っていた。
「くまださんから聞いた言葉なんですけど、お客さんも緊張してるし、いくら我々がウケたところで、そのあと松本さんとかが出てきて、また緊張してるかもしれんし。どこで判断するかっていったら、トップバッターの一発目のボケがウケたら俺たちの仕事は終わりなんだよって」(『やすとものいたって真剣です』朝日放送、2021年9月9日)
ホムンクルスが緑色の液体を吐き出したところで、客席は引かずに笑い声をあげた。トップバッターの一発目のボケがウケたことが、今大会を勢いづかせた。「伝説の回」の影の立役者は、BKBだったはずだ。――と、真偽がはっきりしないこともつい、憶測を重ねてふかしたくなる。バイクだけに。
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