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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > キングオブコント2021、元芸人が全13ネタ一気レビュー!
恒例・元芸人が渾身の全ネタ分析!

キングオブコント2021、1stステージが大盛り上がりだった分決勝が尻すぼみ? 全13ネタ一気レビュー!

元芸人が送る10組全ネタいっきレビュー!

 あらためて本稿は、“個人的見解”なのでご理解を。さらにはネタバレの可能性もある点をご了承いただきたい。

 まずはトップバッターの『蛙亭』。

 どの賞レースでも共通して言えること、”トップバッターは不利”だ。これは僕も同意するし、痛いほどわかる。それは会場がネタに対して「笑う」という空気になっておらず、最悪の場合お客さんが緊張してしまい、笑うのが難しい状態になっていることもある。

 トップバッターがお客さんを笑わせ、「笑う」という空気にする為に、2番手以降が有利とされているが、今大会は審査員までもが初審査で緊張しているという不測の事態。

 初審査ということで点数が甘くなって意外と高得点をつけてしまうのか、逆にトップバッターはある程度厳しめの点数をつけるという不文律に従い、本当につけたい点数よりマイナスにしてしまうパターンか……不利なのか有利なのか見当もつかない。そんな中でネタが始まった。

 蛙亭、最近バラエティ番組で活躍しているのをよく見るが、実はネタを見るのは初めてだった。

 設定は研究室。そこで研究をしている女性研究員。ハプニングがあり実験体が実験室から出てしまうというもの。実験体は体中何かしらの液体でベタベタしていて、ステージに出てきてすぐに口から緑色の液体を吐くというつかみ。客席からは悲鳴も聞こえたが、審査員は笑っていた。このようなボケは一般人が審査する大会やライブでは、生理的に受け付けられない可能性も高い。しかし審査員が芸人の場合、斬新で衝撃的なつかみは大いにプラスだ。

 ストーリー自体は実験体が超生命体で急速に成長していき、捕まえに来た組織と女性を守りながら戦うというわかりやすいものだったので、とても受け入れやすい。ハリウッド映画のような壮大な設定、こうなると命運をわけるのは、演技力だ。

 映画を彷彿とさせる演技力があって初めてボケが笑えてくるのだが、正直蛙亭の2人には演技力が足りなかったように思えた。

 特に研究員役のイワクラが圧倒的に足りない。実験体の中野がどちらかというと男前なセリフでテンポが一定になってしまうので、本来だったらイワクラが感情的なセリフの言い回しを使い、会話のテンポを急速に上げたりする必要がある。さらにはお客さんに気づかれないようにストーリーを進めたり、お客さんの感情を統一させたりと、実は難しい役どころだったのだ。

 残念ながら演技力が足りず、それが出来ていたとは思えなかった。余談だが実験体を介抱したいがベタベタで触れないというボケは、イワクラの演技力がもう少しあれば笑いは明らかに増えていた。

 もう一点惜しいと思ったのは、超人的な力を発揮して研究員を守るボケの部分で、音響と照明を使い過ぎている点だ。舞台技術はサブであってメインではない。それで笑いを起こすより、できれば会話や関係性で盛り上げた方が劇的でオチに特別感がでたのでは無いだろうか。

 キャラクターの愛らしさと見せ方は抜群で、中盤にはほとんどの視聴者が実験体役の中野を好きになっていたと思う。緑の液体を吐いて体がベタベタで汚いのに、前向きな性格と言動で見ている者の心をつかむのは才能だ。

 そこを伸ばして来年につなげていければ、さらに活躍するのは間違いない。

 2番手は、芸歴13年の最年長『ジェラードン』だ。

 設定はひとり教室に残っている転校生のもとに、長髪のキザな生徒がやってきて、さらには角刈りの女子高生がきて、転校生の周りでいちゃいちゃするというもの。

 お笑いのシステムとしてはこれ以上ないくらいベタなものだったが、それぞれの演技力、キャラクターによりかなり面白く仕上がっていた。

 良かった点の一つ目はツッコミの転校生が、2人を客観視してつっこんでいたところ。なぜそのほうが良いかというと、ボケの数を多く入れられるのだ。

 3人一緒に話しをしてボケとツッコミをしてしまうと、どうしてもツッコミと会話をするタイミングが生じ、ボケがストップしてしまう。リズムにすると1ボケ2ツッコミ3ボケとなる。だがボケが2人でボケ続け、客観的につっこめばそこまでとはリズムが変わる。どう変わるかというと1ボケ1.5ツッコミ2ボケとなるのだ。これによりボケの数は遥かに多くなる。ボケ数はこのような賞レースではかなり重要だ。

 もうひとつ良かった点はボケ2人のキャラクターだ。

 特にキザな学生を演じていたかみちぃはとにかく面白かった。さらに角刈り女子高生のアタック西本がジャージで出てきた時の破壊力は、凄まじいものだった。

 ただ残念だったのは、女子高生のしゃべり方だ。可愛くて少しポンコツなしゃべり方を意識したのか、ずっと一定で起伏のない単調なセリフになってしまいイマイチ頭に入ってこない。さらに少し時代に媚びているようなセリフ回しになっていて、そこにジェラードンならではの、オリジナリティ感はないように思えた。

 これだけ強烈な大ボケ2人がいるのだから、どこかで見たようなネタではなく、今まで誰もやったことのないボケを見つけてしまえばジェラードンが優勝する日はそう遠くないだろう。

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