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安倍晋三、麻生太郎、二階俊博、菅義偉そして新幹事長・甘利明――衆院選、落選させるべき議員の名前

今なお訴訟が続く水俣問題と映画『MINAMATA』

 さて、米誌『LIFE』のメインページを何度も飾るなどして、フォト・ジャーナリズムに大きな足跡を残した写真家ユージン・スミスと、当時の妻アイリーン・美緒子・スミスが1975年に発表した写真集『MINAMATA』に収められた写真の数々は、水俣病の悲惨な事実を世界に知らしめる契機となった。

 そのユージン・スミスの写真集を題材にした映画『MINAMATA』が現在公開中で、私も先週観てきた。

 私が編集者になったばかりの頃の事件で、今観てもあの当時の衝撃と怒りが湧いてくる。
 この映画は俳優のジョニー・デップが制作し、アンドリュー・レヴィタスが監督をした。セルビアとモンテネグロで撮影されたらしいが、当時の水俣の雰囲気はよく出ている。サンデー毎日はレヴィタス監督にインタビューしている。

「今もなお被害者の訴訟が続く水俣の実情を知り、非常に複雑な感情を抱きました。そして同時に、過去と現在の水俣に何が起きているのか、その事実と本質をきちんと伝えなければという大変な責任とプレッシャーも感じたのです。
 その水俣では患者さんやご家族、介護者など多くの方と話をしました。誰もが自分たちの人生を映画で描くのを承諾してくださった。そして“世界中の人々が私たちと同じ経験をしなくてすむように、二度と繰り返されないようにするために映画を撮ってください”と仰ったのです。それを聞いて、なんとヒロイックな言葉だろうと激しく感情を揺さぶられました。以前から私は環境問題に関心を持ってきましたが、人生でこれほどの使命感を持ったのは初めてでした」

 主演のジョニー・デップは時に彼の印象が消え、ユージンそのものにしか見えない瞬間があるほど渾身の演技を見せている。

 映画のクライマックスは、ユージンの最高傑作とされる「入浴する智子と母」の撮影シーン。

「母親の体内の水銀を胎盤から吸収するすることにより、智子さん(英語ではアキコ)は胎児性水俣病を発症した。だが、そのお陰で母親も、妹弟も健康が守られた。『この子は宝子』と呼ぶ母親と智子さんの入浴写真は、時に聖母マリアがキリストを抱く『ピエタ像』にも譬えられ、世界の注目を浴びてきた。しかし、あまりに水俣の象徴的写真となりすぎたゆえに、『これ以上、人々に晒され続けてほしくない』という家族の意向により、長いあいだ封印されてきた。今作ではその撮影シーンが再現されるとともに、23年ぶりにオリジナルプリントも公開されている」(サンデー毎日)

 レヴィタス監督はこういっている。

「映画の制作前にご家族とお会いして、このシーンの撮影とオリジナルプリントを使用する許可をいただきました。それでも念のため風呂場でのシーンを入れないバージョンも編集したのです。今も水俣問題に尽力するアイリーンさんがご家族に映像を見せたところ、これで大丈夫ですと言ってくださったと聞きました。(中略)
 他の国や地域でも、今もなお産業公害にあっている人たちがいます。世界中の人々が自分たちも声をあげることにより、物事を変える力があるんだと気づく、試金石のような映画になれたとしたら本望です」

 日本人は忘れっぽい。今もなお救済の戦いが続く水俣問題を決して風化させてはならない。

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