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関東大震災「朝鮮人虐殺」を起こした自警団とは――ラムザイヤーも信じたフェイニクニュースの真相

実はラムザイヤーは虐殺否定派から「転向」

――関東大震災と「警察の民営化」を紐付けて扱ったラムザイヤー論文は2021年3月に改訂されて、初版では長々と虐殺否定論を書いていたものが朝鮮人虐殺についてはわずか4行に言及が減り、「最終的に数千人を殺したと見られる」という通説に即したであろうものに記述が変わっていたそうですね。そのことについて知らない人も多いのではないかと思います。改訂後の論文に関しては、渡辺さんはおおむね妥当な線の見解が書かれているという理解ですか?

渡辺 中央防災会議の委員会が報告書で示した「虐殺の犠牲者数は震災の死者約10万人の1~数%」という見解の枠を超えるものはないように思います。コメントのしようがないほど短くなったというのが率直な感想です。

――著書を元に朝鮮人虐殺否定論に対しての渡辺さんの見解をまとめると、
・「大量虐殺を物語る公文書はない」に対しては、「日本政府が処分して残さなかったから、また、もともと作らなかったから存在しないだけ。傍証として、東学農民戦争の戦死記録を改竄した、といった前科がある」
・「流言は根拠のないデマではなかった」に対しては、「流言の証言はある。デマではない根拠とされる当時の新聞は、流言をそのまま伝えた誤報の新聞。報道統制が解かれると、朝鮮人の犯罪として確証あるものはひとつもないことを、事実を踏まえて報道がなされている」
・「殺された朝鮮人はいたが犯罪者で、日本人の正当防衛だ」に対しては、「朝鮮人虐殺が公然と行われ、軍や警察が関わったことも多くの人が目撃していたが、自警団に責任を押しつけて罪に問おうとしたので市民の間に疑問が強まり、虐殺を正当化するために『朝鮮人の犯罪が実在した』という政府発表のフェイクニュースが流されたから」
ということでしょうか。

渡辺 そのような枠組みで考えております。「公文書を残さない」とはどのようなことなのかをなかなかイメージできないかもしれませんので、画像を一枚お見せしましょう。

関東大震災「朝鮮人虐殺」を起こした自警団とは――ラムザイヤーも信じたフェイニクニュースの真相の画像4

 これは、日清戦争の記録を国立公文書館で検索した結果の画面です。後備歩兵18大隊、20大隊の記録はあるのに、東学農民たちと向かい合った後備19大隊の記録が存在しないことがわかるかと思います。
 本の中でも書かなかったのですが、「不逞鮮人」や「朝鮮人パルチザン」に対する恐れや敵対心は、在郷軍人だけではなく、現役の軍人や警察官も当然のように抱いていたはずです。
 昭和10年代に日中戦争(1937~45年)が本格化するまで、日本人の男性の中で軍隊を経験する人は2割程度であったとされています。大正時代まで在郷軍人は日本社会においても少数者でした。
 今日からみると、そうした当時の社会の事情はわかりにくく、理解を困難にしているように思えます。 

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