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世界は映画を見ていれば大体わかる#20

トムクルーズもついに参戦!? 「東西冷戦」を描き切ったトンデモ(?)U-NEXT配信映画3本!

トムクルーズも参戦!? 東西冷戦が続いている映画3本!の画像1
Getty Imagesより

 トム・クルーズが主演予定の次回作で初の宇宙空間での映画撮影に挑むという。15年以上にもわたる人気作『ミッション・インポッシブル』シリーズは、還暦を目前に控えたトムが前人未踏のアクションに挑むところが毎回の話題だが、それを上回り、宇宙空間で初めて映画を撮影した男となる! まさにミッション・インポッシブル!

 ところが、ロシアで企画された映画がトムに先んじて宇宙空間で撮影されるという。アメリカとロシアが競う宇宙空間撮影映画対決。2020年代になっても冷戦が続いているのかと思わざるを得ない! ……というわけで、今回は冷戦についての映画です。

「大統領と私は君が米国のために戦うのを期待している」

トムクルーズも参戦!? 東西冷戦が続いている映画3本!の画像2
『完全なるチェックメイト』(2015)

 アメリカではじめてチェスの世界チャンピオンになったボビー・フィッシャーの半生を描く『完全なるチェックメイト』(2015)は、IQ187で150手先が読めるとまで言われたチェスの天才少年ボビーが当時の最年少記録15歳でチェスの王者、グランドマスターとなり世界チャンピオンに挑むが、他国の選手が高級車を乗り回し、一流ホテルに宿泊するのを見て「俺にも同じ待遇をしろ」と迫り、引き分けばかり狙う相手にブチ切れ引退宣言をしては復帰を繰り返し、我儘かつ奔放すぎる性格で周囲を混乱させる。

 そんなボビーに自称「チェスが好きな愛国者」の弁護士が現れ、無償でボビーの代理人を買って出る。「僕は君に世界チャンピオンになってほしいだけだ。君の望むものは何でも手に入れられるようにしよう」。代理人の活躍で要求はすべて通るようになったボビーだが、当時の世界チャンピオン、ソ連のボリス・スパスキーにはどうしても勝てない。

 1972年、アイスランドでスパスキーと世界一をかけて戦うことになるボビーだが、空港でカメラマンのフラッシュにまたまたブチ切れて自宅に引きこもってしまう。そんなボビーに一本の電話が。当時の米大統領ニクソンの補佐官、キッシンジャーだ。「大統領と私は君が米国のために戦うのを期待している」。ボビーは考え直し決戦の地へ旅立つ。

 いくら世界一を狙えるチェスプレイヤーだったとはいえ、気難しくわがままなボビーのために無償で尽くす人間が来たり、あらゆる便宜を図られ、大統領補佐官まで出張ってくる理由は何か?

 東西冷戦の真っただ中、ソ連はなんと24年間もチェスの世界チャンピオンの座を独占していた。ただ強い選手がいたというだけではない。ソ連側は「共産主義のシステムが優れているからこそ世界チャンピオンを生み出せるのだ。資本主義など相手にならない」と喧伝していた。普通に考えたら共産主義とチェスに何の関係があるの? と思うだろうけど、共産主義と資本主義の代理戦争だった冷戦下では遊びのチェスでさえ国家間の争いに利用されていたのだ。

アメリカの駒として扱われていただけのボビーだが、共産主義運動に身を投じる母親に育てられたせいか、その後のボビーは反米主義を隠そうともせず、国籍をはく奪されたために晩年は世界チャンピオンになったアイスランドで生涯を終えた。

 彼は生涯独身を貫き、チャンピオンになる前にカリフォルニアで童貞を捨て、その時の相手と付き合うが結婚はしなかった。天才だけど人間性に難のある人間には大抵、傍で献身的に支える女性の存在があったりするものだけど、そういうのが一切ないところに共感した。

 ボビーはインタビューで「チェスは人間の真理にたどり着く唯一の手段だ」と答えており、真理にたどり着くためには女の愛はいらねえ! ってことですね! 勉強になりました。

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