『オモウマい店』、グルメ番組の先にある人間ドラマ! 元芸人が見たグルメ番組の裏側とは
#オモウマい店
テレビ復活の兆しはスタッフの?!奮起
今年6月22日に放送された回では、横浜にある海鮮居酒屋『食楽たざわこ』を取り上げた。
お客さんに対して、いかに低価格で提供できるかに命を懸け「ワラサのカマ焼き」や「ブリの刺身」など、結果全商品が385円という激安っぷり。安くしすぎて経営がうまくいかず、お店をパートさんに任せ、店主はウーバーイーツで赤字を補填しているという何とも本末転倒な事に。
これだけ聞くと何ともバカな店主だと思うかもしれないが、放送後その店がどうなっているかを8月17日に放送した。店は客足が途絶えない人気店となっていた。相変わらず商品は385円という激安だが、店主は嬉しそうに「もう忙しくてウーバーイーツをやる時間がありません」と笑っていた。店主と同じように、ウーバーイーツで働く人たちも少しでも仲間を助けたいという事で食事に来てくれるという。「兄が真面目にお客さんの為に働いてきて、やっと報われた」と店主の妹が涙を流して喜んでいる姿がまた感動的だった。
ほかにも、番組に出たことで、世間に知られて経営難だったお店が何件も救われているのだ。ヒロミさんは「テレビの影響力って、まだまだ捨てたもんじゃない」とつぶやく。
まさにその通り、間違いなくYouTubeにここまでの影響力はない。
一家団欒のリビングや夕飯と食べるときはやはりテレビなのだ。反抗期の子どもが携帯をいじりながら、台所では食事の後片付けをしつつ、満腹になって寝っ転がりながらテレビを観る。たとえオワコン、カビの生えたメディアと呼ばれても、リビングでBGM代わりに流れているのはテレビなのだ。
では何故テレビがここまで復活したように思えるのか。元芸人でグルメ番組も経験している僕は、その理由が番組スタッフにあると分析する。
スタッフは、店本来の姿を撮影する必要がある。作りものではない自然な姿が、この番組の核となるからだ。数日間に渡って現地に寝泊まりし、少しずつ店主や店員さんと仲良くなり、時には手伝いも率先して行う。そうしてようやく店本来の姿を撮影するのだ。
取材が終わり店を後にする際に必ずと言っていいほど店主は「また来いよ」「寂しいなぁ」という言葉を口にする。さらには「お前以外の取材は受けない」「結婚式に呼べよ」「俺の養子になれ」という最高の賛辞を与えられることもあるのだ。
なぜそこまでスタッフが可愛がられるのか?
僕が思うに、現在ディレクターのポジションにいる世代はゆとり世代。ガツガツしておらず、言われたことを愚直にこなし、思ったことは口にするという素晴らしい世代。加えてテレビ局に就職する人たちは頭も良い。慣れない配膳やのんびり働く姿に、最初はイライラさせられるが、文句を言わず一生懸命手伝う姿は憎めない。取材を通して人生観や夢を語り、気づいたら心を許して可愛がってしまうのだ。
しかもこの世代はネットにも精通している。黄金期のテレビを存分に楽しみ、同時にネットの世界にもいち早くネットの世界に足を踏み入れた世代が今テレビのスタッフとして活躍し始めている。
最近はYouTubeの字幕の出し方を真似た番組も結構ある。さらには誤字も多い。
これは編集を専門職が編集をしているのではなく、若いディレクターがパソコンを使い自分自身で編集しているという証拠だろう。ディレクターという職に就くほどテレビが好きで、ネットのノウハウを持っており、人に好かれる術を持ち、さらには頭脳明晰というメディアハイブリット。
新たな世代の活躍により、テレビ完全復活の日は近いだろう。そうなった時、果たして動画の世界はどうなるのだろうか。
長い歴史の中でオワコンに近づいたり爆発的に流行ったりを繰り返しながら、人々が気軽に楽しめるエンタメツールの地位を確立してほしいと願う。それが僕の理想だ。
テレビもYoutubeも映画も舞台も全部娯楽だ。選択肢は多ければ多いほどいい。
最後に、会計のときにそっと値引きしようとして、客が「え?!」と驚くと全力で「騒ぐんじゃねえ!」と怒る鈴子ママがいる店『中華料理 』は、僕が生まれ育った町、茨城県日立市にある。今思えば学校の帰り道にあったお店。馴染みのある茨城弁が懐かしく、元の世の中に戻った時は是非食べに行きたいと思う。密を気にせず店内は客でごった返していると思うが。
アフターコロナの楽しみがテレビから生まれる。
テレビもまだまだ捨てたもんじゃない
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