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新卒採用募集を行わなかった事業所33%―「厚生労働省」労働経済動向調査で明らかに

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、今春に新卒者の正社員採用募集を行わなかった事業所が33%にものぼったことが、厚生労働省が9月16日に発表した8月の労働経済動向調査で明らかになった。

 同調査は年4回、景気の変動が雇用などに及ぼしている影響や今後の見通しについて調査するもので、今回の調査では8月1日現在の状況について主要産業の規模30人以上の民営事業所2866事業所が回答した。

 雇用判断のDIは、「増加」と回答した事業所の割合から「減少」と回答した事業所の割合を差し引いた値で、プラスは雇用者の増加、マイナスは減少となるが、正社員等雇用判断DIは21年7~9月期の実績見込みは3ポイントの増加となっている。

 しかし、見込み段階では7ポイントの増加だったことから、実績見込みは見込み段階よりも悪化している。これは、20年7~12月期以降のすべての期間で同様の動きとなっている。こうした傾向が継続すると、21年7~9月期も、10~12月期も実績のDIは減少に転じる可能性が高い。(表1)

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 7~9月期実績見込みを産業別にみると、「サービス業(他に分類されないもの)」で13ポイント、「建設業」で9ポイントの増加となる一方、「宿泊業、飲食サービス業」で5ポイント、「医療、福祉」で4の減少となった。

 10~12月期見込では、「情報通信業」で13ポイント、「運輸業、郵便業」で10ポイント、「学術研究、専門・技術サービス業」で10ポイント増加となる一方、「宿泊業、飲食サービス業」で3ポイントの減少となっている。

 一方、パートタイム雇用判断DIの7~9月期実績見込みは1ポイント減少に、10~12月期見込みはゼロとなっているが、こちらも正社員等雇用判断DIと同様に、今後、減少に転じる可能性が高そうだ。

 ところが、労働者過不足判断DIでは、正社員等29ポイントと11年8月調査から41期連続して不足超過に、パートタイムでも20ポイントと09年11月調査から48期連続して不足超過だった。

 労働者過不足判断DIは労働者が「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値で、プラスであれば人手不足と感じている事業所が多いことを示す。

 DIで見る限り、長い間、労働者不足が継続しているにも関わらず、雇用者DIでは雇用者の減少が進んでいる。これは、新型コロナの影響によって、経営環境、業績が悪化し、雇用調整が行われていることを示している。

 実際に調査でも、残業規制、配置転換、一時休業、希望退職者の募集、解雇などの雇用調整実施した事業所の割合は、21年4~6月期実績で32%となっている。この雇用環境の悪化は、採用にまで及んでいる。

 中途採用の実績がある事業所の割合は20年7~9月期から50%を超え、21年4~6月期には61%に達したが、7~9月期見込みでは減少に転じ、10~12月期では大幅な減少が見込まれている。

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 さらに深刻なのが、新卒者の採用だ。冒頭のように、今春の新卒者の採用で正社員を募集しなかった事業所は、前年から7%ポイント増加し、33%にのぼった。産業別では、警備業や廃棄物処理業といったサービス業(他に分類されないもの)が前年比8%ポイント増加の61%、クリーニングやカラオケなどの生活関連サービス、娯楽業%ポイント増加の47%、宿泊、飲食サービス業が同10%ポイント増加の45%などで募集をしなかった。

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 厚労省は、「新型コロナ感染拡大の影響により、対人サービス業を中心に経営環境が悪化し、採用抑制の動きが強まった」とみている。

 正社員採用の募集を行わなかった事業所が、20年3月卒業者よりも21年3月卒業者で増加しているのは、非常に憂慮される事態だろう。新型コロナの感染拡大状況次第では、22年3月卒業者の採用が、より悪化する事態が懸念される。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2021/09/26 17:00
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