『#家族募集します』は大人向けの“おとぎ話”だった? 全9話で描かれた儚くも美しい家族の姿
#家族募集します
“家族”を巡る、まるで絵本のようなドラマだった。
9月24日にフィナーレを迎えたTBS系金曜ドラマ『#家族募集します』。主演の重岡大毅(ジャニーズWEST)が演じたのは、絵本作家の妻を亡くしたばかりのシングルファザー・赤城俊平。母親に捨てられた過去を持つ幼なじみ・小山内蒼介(仲野太賀)とともに、お好み焼き屋「にじや」の2階でシングルファザー&マザーたち、大人4人と子ども3人が共同生活をしながら、全9話を通じてひとつの“家族”となっていく姿が描かれた。最終回は、お好み焼き屋店主・銀じいちゃん(石橋蓮司)の本物の家族が現れ、彼らがまた一緒に暮らすために、俊平たちは「にじや」を出てともに暮らした思い出を胸にそれぞれ別々に歩き出す、という展開だった。
死別や離婚、育児といった現実的な重いテーマを扱いながら、最初から最後までファンタジーに彩られた物語だった。子どもたちは皆素直で聞き分けが良く、家族それぞれが抱えるさまざまな問題も、皆で話し合い、大きく拗れることもなく解決していく。「現実的じゃない」「あり得ない」、そんな声が多く聞かれる一方で、毎話感動して泣いてしまう、という視聴者も多かった。
これは大人に向けたおとぎ話が描かれた絵本なのだ。絵本には養育費も財産分与も出てこないし、親が死んでも離婚しても、子どもは素直に受け入れ前向きに生きていく。シビアな現実問題やドロドロした人間の醜さは綺麗に削ぎ落とされ、伝えたいメッセージを届けるフィクションだ。何も解散しなくても「にじや」の近所で皆で暮らせる物件を探して住めばいいのでは、なんで蒼介は結婚して自分の家族を作らないのか、なんて無粋なことは言ってはいけない。すべては予定調和なのだ。困難を抱えた人たちが集まり、助け合い支え合い、家族となって、やがて離れ離れになるけれど家族の絆は変わらない。家族は温かく、優しく、“でっかい愛”に包まれたもの、そしていつも見守ってくれて自分たちが帰る場所。
「私たちには帰る場所がある。だから新しい一歩が踏み出せる」。私たちはその愛と夢と希望の詰まったファンタジーが投げかけるメッセージをただ素直に受け止めればいいのだ。
コロナ禍でドラマ制作自体が難しいなかで、最後は駆け足になってしまったものの大団円を描き切った『#家族募集します』。ドラマとしては賛否が分かれる作品だったかもしれないが、コロナ禍で困難を抱える人が多い今だからこそ、届けたかった物語なのだろう。雨上がりにかかる美しい虹はやがて儚く消えてしまうけれど、感動は心にしっかりと残り時に夢や希望を与えてくれる。「にじや」の“家族”はそんな虹のような家族だ。皆が集まればきっとまた虹はかかるだろう。
最後にひとつだけ。子どもたち目線の家族への想いや、亡き妻が遺した絵本を俊平が完成させるまでの過程、蒼介のカメラマンとしての挫折と復帰のストーリーなど、今回描き切れなかったものをスピンオフでいつか見てみたい、そう願いながら、この絵本をそっと閉じよう。
■番組情報
金曜ドラマ『#家族募集します』
TBS系毎週金曜22時~
出演:重岡大毅、木村文乃、仲野太賀、岸井ゆきの、金子大地、小松和重、福山翔大、丸山礼 、石橋蓮司、佐藤遙灯、宮崎莉里沙、三浦綺羅 ほか
脚本:マギー
演出:福田亮介、村尾嘉昭
プロデューサー:佐久間晃嗣、岩崎愛奈、那須田淳
主題歌:ジャニーズWEST「でっかい愛」(Johnny’s Entertainment Record)
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kazokuboshuu_tbs/
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