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『スイング・ステート』くせ者司会者ジョン・スチュワートがアメリカ選挙システムを強烈風刺!

コミカルでありながらも適格な風刺と問題提示

『スイング・ステート』くせ者司会者ジョン・スチュワートがアメリカ選挙システムを強烈風刺!の画像2

 物語は、トランプの劇的な勝利に対して、民主党選挙参謀ゲイリー・ジマーが動揺を隠しきれないシーンから始まる。投票日の午前中までメディアもヒラリーが勝利すると報道していた。しかし、予想していなかったラストベルトの票がこぞって共和党に入ったことで、トランプが逆転勝利。実際に共和党関係者を襲った「トランプ・ショック」がコミカルに描かれる。

 YouTubeで退役軍人のジャックの発言が拡散されて、アメリカ中から注目を浴びていることを知り、4年後の選挙のためにも早々に下地を作る必要があることから、州においての民主党の顔にジャックを立候補させようとウィスコンシン州に飛ぶ。

 選挙戦において、もはやSNSはなくてはならない存在であり、ラストベルトの労働者のアイコンとしてジャックを立候補させることこそがスイング・ステートを征することだと信じているゲイリーの後を追うように、共和党の選挙参謀フェイスも後を追ってやって来る。

 公約の重要性や国民の意志よりも、相手の揚げ足取りが目立つアメリカ選挙そのものを、この2人のキャラクターが体現しているようでもある。

 選挙を皮肉った作品としては、『俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員!』(2012)もあったりするが、「俺たち~」の場合はコメディ色がより強調されていていた。今作も同様に誇張されている部分も多く、もちろんコメディがベースとしてあるものの、政治風刺としての軸がしっかりしていて、それでいて最後には、選挙を数字としてしか見ていないアメリカの政治家、選挙関係者たちにアメリカ国民がカウンターをくらわせるようなドンデン返しもある。このカウンターこそが、アメリカが抱えている「怒り」でもあるのだ。

 アメリカでは大統領選挙が控える2020年6月に配信にて公開したというのも、かなり挑戦的。同じく『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』も同年10月に配信するなど、アメリカは映画自体を逆プロモーションとして、ぶつけてくるのも凄いところだ。

 2020年CNNニュースの大統領選挙報道では、アリゾナ、フロリダ、ジョージア、アイオワ、ミシガン、ミネソタ、ネバダ、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルバニア、テキサス、ウィスコンシン、コロラド、ニューパンプシャー、バージニア州がスイング・ステートといわれ、今まではなかった州も含まれていたことで、より先の読めない展開となっていただけに、皮肉なことに今作にリンクするような反応が現実社会にも起きていたのだ。

『スイング・ステート』くせ者司会者ジョン・スチュワートがアメリカ選挙システムを強烈風刺!の画像3

『スイングステート』
出演:スティーヴ・カレル/ローズ・バーン/クリス・クーパー/マッケンジー・デイヴィス
監督・脚本:ジョン・スチュワート
2020年/アメリカ/102分/カラー/ヴィスタ/原題:IRRESISTIBLE/
配給:パルコ ユニバーサル映画 ©2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved
9月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷・渋谷シネクイントほか全国ロードショー

 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

Buffys Movie & Money!

ばふぃーよしかわ

最終更新:2021/09/20 20:00
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