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精神病患者が転院できずに新型コロナ死亡例235名…日本精神科病院協会が窮状訴え

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 新型コロナウイルスの感染により、精神科病院に入院している患者が転院を要請しても転院できず、235名が亡くなっていることが明らかになった。日本精神科病院協会(民間の精神科病院1185病院で組織)は9月15日、記者会見を行い、窮状を訴えるとともに、政府に対して要望を行った。

 同協会が行った「新型コロナウイルス感染症対応状況及びワクチン接種状況に関する調査」では、回答のあった711病院で、8 月23日時点で新型コロナ感染者が発生した病院は310病院、総感染者数は5091名(患者3602名、職員1489名)、そのうち感染者の累計が5名以上の病院は120病院だった。

 精神科病院でコロナ陽性者が発生した場合には、精神疾患の治療に特化している精神科病院では感染症に対する専門的な治療には限界があり、速やかに転院出来るよう要望している。しかしながら、今回の調査では精神科病院が要請しても、転院できずに亡くなった方が30病院で235名にのぼった。

 陽性者の転院状況では、「必要な患者の一部が転院できなかった」が14病院、「必要な患者の半数程度が転院できなかった」が10病院、「必要な患者の殆どが転院できなかった」が21病院、「必要な患者は全く転院できなかった」が13病院の合計58病院もあった。

 新型コロナ患者の入院患者数が増加し、医療体制がひっ迫している上に、新型コロナ感染の治療を行え、加えて、精神疾患の患者を受け入れる体制が整っている病院は非常に少ないというのが現状だ。

 一方、精神科病院では閉鎖病棟も存在し、病棟内でのソーシャルディスタンスの確保、アルコールやソープ等消毒剤設置(誤嚥の発生)、マスク装着等の衛生管理の徹底が難しく、医療スタッフが感染対策を懸命に施しても、一旦、ウイルス等による感染症が侵入すると、蔓延しやすい環境にある。

 こうした状況に対して、同協会は、精神疾患を有する患者が新型コロナに感染し、医師がその重症化により転院が必要と判断した際には、患者の生命を守るため自治体首長の責任において遅滞なく対応し、感染症医療、精神医療の両面から必要な医療の提供が円滑に行われる体制を構築することを要望している。

 また、同協会の調査によると、ワクチン接種については、71%の入院患者が既に2回接種を終えていた。しかし、65歳以上が83%に対し、65歳未満が54%と低く接種が進んでいない状況だった。

 背景には、ワクチン供給量に限りがあり接種が進まないという問題に加え、精神疾患で入院する患者には、「本人に同意能力がなく、家族への確認が取れず、同意を得ることが困難」や「成年後見人からの同意が取れない」、「身寄りのいない認知症患者から同意を得ることができない」「患者の家族等から接種券を入手できない」といった入院患者の様々な事情がある。

 こうした事態に対して、同協会では政府に対して、精神科病院への速やかなワクチン供給とともに、精神疾患で入院する患者については、精神症状によりワクチン接種の意思の確認が困難な場合や、接種券の回収が難しい場合等があることから柔軟な対応が出来るような措置を講じることを要望している。

 本来、医療もしかり、ワクチン接種も「万人が差別なく、受けることができる」のが基本だ。新型コロナ禍による医療のひっ迫で、一部では差別的な入院治療やワクチン接種が行われているのは事実だが、政府はこうした事態を早急に、協力に是正していくべきだ。

 特定の病気や事情によって、多くの人の命が失われるような事態は絶対に避けなければならない。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2021/09/19 07:00
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