モンスタークレイマーとヘタレ店長との壮絶戦!古田新太と松坂桃李が演じる不寛容社会『空白』
#パンドラ映画館 #松坂桃李 #古田新太
どうしようもないダメ人間だけど、憎めない一面も持っている。人間は多面性を持った生き物であり、そんな人間の多面性まで全否定してしまうと、社会はとても息苦しくなってしまう。犯罪映画『ヒメアノ~ル』(16)などで巧みな心理描写を見せてきた吉田恵輔監督と、『新聞記者』(19)や『ヤクザと家族 The Family』(21)といった硬派な作品で知られる制作会社「スターサンズ」とのタッグ作『空白』は、不寛容さが増す現代社会に一石を投じた社会派サスペンスとなっている。
物語の舞台となるのは、とある小さな地方都市。スーパーマーケットの店長・青柳(松坂桃李)は、地元の女子中学生・花音(伊東蒼)がマニキュアを万引きしようとするのを見つける。青柳が注意すると、花音は店外へと逃げ出した。追い掛ける青柳。すると花音は車道へと飛び出し、運悪く車に撥ねられてしまう。あまりにもあっけない、ひとりの少女の人生の幕切れだった。
小さな町で起きた事件を、マスコミは「店側の対応に行き過ぎた行為はなかったのか?」と世論を煽る。怒りが収まらないのは、シングルファーザーの添田(古田新太)だった。厳しく育てた自分の娘が、万引きなどするはずがない。花音の通夜に現われた青柳の胸ぐらをつかみ、「いたずら目的で、万引き犯に仕立てたんじゃねーのか?」と詰め寄る。その様子がテレビで流れ、青柳は「ロリコン野郎」とバッシングを浴びることになる。
娘の死が納得できない添田は、花音の通っていた中学校にも怒鳴り込む。花音は亡くなる前夜、話したいことがあると言っていたのを、添田は聞くことができなかった。きっと、おとなしい性格の娘は学校でいじめに遭っていたに違いない。怒りの捌け口を求める添田を、誰も止めることはできなかった。
モンスタークレイマーとして怪物化していく添田を、ブラックコメディ『小森生活向上クラブ』(08)以来の映画主演となる古田新太が怪演。土下座して謝罪する青柳役の松坂桃李は、『孤狼の血 LEVEL2』(公開中)でのマル暴刑事役とのギャップが激しい。日本刀も拳銃もないが、主演男優ふたりの暑苦しい激突ぶりが物語をぐいぐいと引っ張っていく。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事