モンスタークレイマーとヘタレ店長との壮絶戦!古田新太と松坂桃李が演じる不寛容社会『空白』
#パンドラ映画館 #松坂桃李 #古田新太
SNSが生み出した相互監視体制
松山ケンイチ、東出昌大ら出演した『BLUE/ブルー』(21)では、中学時代からトレーニングを続けているボクシングの世界を題材に、青春時代の終焉を描いた吉田監督。もともとは憎めないダメ人間たちを描いたコメディ映画で人気を博してきた吉田監督は、現代の不寛容さを増す社会に息苦しさを感じているひとりではないだろうか。
吉田監督がこれまでに手掛けてきた人気作で妙演を見せていた『純喫茶磯辺』(08)の宮迫博之、『さんかく』(10)の高岡蒼佑、『犬猿』(18)の新井浩文は、それぞれ異なる事情によって世間からバッシングされ、それまでの居場所から姿を消すことになった。
SNSは個人が情報を発信し、表現する自由と多くの人とつながる機会をもたらしたが、同時に社会の規律からはみだした言動は許さないという相互監視体制も生み出している。本当に責められるべき対象なのかどうか疑わしいグレイな存在までも、ネットの世界では匿名の人たちの「正義感」によって叩かれることになる。この息苦しさからは、どうすれば脱することができるのか。過ちを犯した場合は、どうすれば償うことになるのか。世間の人々がすっかり飽きるまで、ずっと叩かれ続けなくてはいけないのか。
ひとり娘を失った添田は、いまさら離婚した元妻・翔子(田畑智子)を頼るわけにもいかない。ひとりぼっちになった添田は、ふとしたきっかけから絵を描き始める。まったくの素人なので、添田が描く絵はお世辞にもうまいとは言い難いが、心の中に「絵」というフィクションの世界を持つことで添田の心境にほんの少しだけ変化が生じることになる。
添田だけでなく、青柳が失ったものも少なくない。決して「大団円」と呼べる、明るいハッピーエンドでもない。だが、痛みを伴いながらも、希望を予感させるラストとなっている。きっと、その予感は吉田監督だけではなく、不寛容社会を生きる誰もが欲しているのものではないだろうか。
『空白』
監督・脚本/吉田恵輔 企画・製作・エグゼクティブプロデューサー/河村光庸
出演/古田新太、松坂桃李、田畑智子、藤原季節、趣里、伊東蒼、片岡礼子、寺島しのぶ
配給/スターサンズ、KADOKAWA PG12 9月23日(木)より渋谷ユーロスペースほか全国ロードショー
(c)2021『空白』製作委員会
https://kuhaku-movie.com
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