松坂桃李と古田新太の男泣きで魅せる! 狂った運命の歯車が突き刺さる映画『空白』
#松坂桃李 #古田新太
怒涛の負の連鎖、決して無傷ではいられない結末へ!!
一方、松坂が演じるのは、そんな充の攻撃とメディアからリンチとも取れるようなバッシングを受けるスーパーの店長・直人。亡き父親からスーパーを引き継いだ直人も普段は、感情をあまり表に出さないキャラクターだが、理不尽すぎる状況から湧き上がる悲しみと怒り、絶望感などが次第に隠しきれなくなっていく。正に『ユリゴコロ』(17)『蜜蜂と遠雷』(19)でも見せた、松坂の得意とする役どころだ。
直人を支えようとするが空回りし続けるパートの麻子(寺島しのぶ)、花音の担任で自身も心無い言葉を浴びせていた若菜(趣里)、充の元妻で花音の実の母・翔子(田畑智子)、さまざまな周囲の人物やマスコミ、世間をも巻き込み、あらゆる視点から「こうなると思っていなかった……」が交差し、容赦なく突き刺さってくる。
人と親、人の子であれば、誰もが被害者にも加害者にもなってしまう、日常と隣り合わせの身近な事実でありながら、どちらに転んでも究極の地獄。
それでも、消えてしまいそうな微かな光を信じて生きていくしかない……それが残されたものに課された使命ということを、本作では訴えかける。
充があるシーンでボソっと言う「みんなどうやって、折り合いをつけてるのかな……」というセリフが耳から離れない。そして、直人が見せる「これしかできないっ!」といった切なる心の声が聞こえてくるような、渾身の土下座が目に焼き付く。
耳にも目にも、そして心にも傷痕が残される。決して無傷ではいられない作品だ。
そういえばよく履歴書の経歴欄などで「空白期間」と言ったりする。例えば前職と現職の間、半年の空白があったとしても、経歴に書く場合は、ただの数字と文字になってしまう。
しかし、その空白期間には、語られない、語りたくないものが隠されていて、実はその部分の方が人生にとっては良くも悪くも分岐点であるということ。そういった意味合いもタイトルには隠されていると感じた。
『空白』
監督・脚本:吉田恵輔 ※吉田監督のよしは土となります。
音楽:世武裕子
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
制作プロダクション:スターサンズ
撮影協力:蒲郡市
配給:スターサンズ/KADOKAWA
製作:2021『空白』製作委員会 (C)2021『空白』製作委員会
公式サイト:kuhaku-movie.com
2021年9月23日(木・祝)ロードショー
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