瀧内公美主演の社会派ミステリー『由宇子の天秤』真実の行方を決めるのは、はたして誰なのか?
#映画 #パンドラ映画館
プロデューサーは『この世界の片隅に』の片渕須直監督
フリーランスのディレクターである由宇子は、優れた取材力を誇り、現場のことは誰よりも詳しい。しかし、テレビ局の社員プロデューサーには逆らうことができない。お金を持つ側の人間の意向によって、真実は都合よくねじ曲げられてしまう。春本監督がドキュメンタリー監督たちを取材して、リアリティーたっぷりに脚本に盛り込んだ部分である。だが、これはドキュメンタリー作品だけでなく、劇映画にも言えることだ。
「助監督時代、テレビ局側の意向によって表現を変えられる監督たちの姿を見てきました。同じ轍を踏んじゃダメだと考え、2018年に『映画工房春組』を立ち上げました。全国に約270人いる会員のみなさんから毎月少しずつお金を出してもらい、そのお金を元手に『由宇子の天秤』は制作しています。足りない分は、日大芸術学部時代にシナリオの書き方を教えてくれた恩師の松島哲也監督、『この世界の片隅に』(16)の片渕須直監督がプロデューサーを引き受けてくださり、融資してくれました。おふたりは日芸の同期です。私にとって、おふたりは父親であり、兄のような存在です(笑)。それでも、まだ足りない分は私の家族からも借り、また助成金も受けています。総額で1,500万円。みんなの大切なお金を預かって映画を制作しているので、1シーン1カットも妥協したものにはできないんです」(春本監督)
映画のクライマックス、それまで刃物を突きつけるように相手にスマホを向けていた由宇子だが、突きつけた刃物は大きなブーメランとなって由宇子自身に帰ってくる。真実とは何か、正義とは何か。ひたむきに追い続けてきた由宇子は、ボロボロに傷つく。ジャーナリストの足場はとても脆く、そして真実はグラグラと揺らぐことになる。
物語のクライマックス、肩に背負っていた天秤棒の重さに押し潰されそうになった由宇子は、ある決断をする。揺れ動く由宇子は、はたしてどんな行動を見せるのか。『由宇子の天秤』は最後の最後、最終カットまで見逃すことができない。テレビのニュースや新聞記事とは違い、観る者の視点によってさまざまな発見ができる上映時間2時間33分となっている。
『由宇子の天秤』
監督・脚本・編集/春本雄二郎 プロデューサー/春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
出演/瀧内公美、河合優実、梅田誠弘、松浦祐也、和田光沙、池田良、木村知貴、前原滉、永瀬未留、河野宏紀、根矢涼香、川瀬陽太、丘みつ子、光石研
配給/ビターズ・エンド 9月17日(金)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
c) 2020 映画工房春組 合同会社
https://bitters.co.jp/tenbin/
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