BLACKPINK、BTS……K-POPとビッグメゾンの蜜月
#音楽 #K-POP
ダサい人気者とは組まないビッグメゾンの“本音”
SNSでの影響力と並んで、芸能事務所のファッション戦略もハイブランドと結びつきを強くした。
まず衣装。日本のアイドルグループは統一感を重視し、オリジナルで衣装を作ることが多い。一方、韓国ではビッグメゾンの既製服を組み合わせて衣装として使用する傾向があり、メンバーの装いがバラバラなことも多々ある。また、ブランド側から提供された服ではなく、購入してスカート丈を切るなどしてアレンジすることも。それだけスタイリングを重視し、費用をかけているのだ。
「K-POPアイドルは親近感よりも人々の憧れの存在、セレブリティを目指している印象があります。新人の頃からハイブランドの洋服を着せて、集団としての調和より、個人のインフルエンサーとしての力を伸ばそうとしているようにみえます」(田中氏)
「そうしたファッション戦略が特に顕著なのがYGだ」と語るのは、BLACKPINKのデビューを手がけるなどYGのクリエイティブ・ディレクターを務めた後、独立して先述の深田氏も属するAXISを18年に設立したSINXITY(シン・シティ)氏。
「YGのアイドルはトレンドの服を音楽のコンセプトに合わせて取り入れてきました。2NE1(09~16年解散)の時代はストリート系でしたが、BLACKPINKがハイブランド路線に転換しましたね」(SINXITY氏)
また、日本のある有名ハイファッション誌の編集者A氏は、こう語る。
「5年ほど前まで欧米では『K-POPはちょっとダサい』というイメージがありましたが、それを完全に塗り替えたのがBLCKPINK。以前、YGはジウンとヤン・スンホという敏腕スタイリストを抱えていて、その2人が欧米の有名スタイリストと同じ温度感で動いていた。例えば、14年に設立された気鋭ブランドのヴェトモンをいち早くBIGBANGに取り入れるなどしていましたね。今ではTWICEらが所属するJYPエンターテインメントもYG的になって、MVのヴィジュアルの質が上がっている。そうして業界総出でアイドルがビッグメゾンのアイテムを着こなせるカルチャーをつくり上げました。ハイブランドを着慣れていない日本のアイドルとは大きく異なる点でしょう」
14年には、LVMH(モエ ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループ[註:ルイ・ヴィトン、ディオール、ジバンシィ、フェンディ 、セリーヌなど多くのブランドを傘下に収めるコングロマリット]がYGに日本円にして約61億円を投資。アイドルを生かしたマーケティングに注力する一方、文化として支援する意味もあったのではないかとみられる。
そして、ファッション戦略はステージ上だけでなく、私服にも及ぶ。
「韓国では“空港写真”“出勤写真”といって、スナップをファンが勝手に撮ってネットにアップする文化があります。だから、アイドルたちは空港やテレビ局に行くときもスタイリングする手間を惜しまない」(田中氏)
ブランド側もプライベートで着てもらおうと商品を積極的にアイドルへ提供する。それもPRではなく、「親しい友人だからこそ贈る」ということをデザイナー自らSNSでアピール。BTSやBLACKPINK、SEVENTEEN、Red VelvetなどK-POPグループは英語が堪能なメンバーがいることも珍しくなく、デザイナーや海外セレブと独自に関係を深められるのも強みとなっている。
ただし、ビッグメゾンは人気さえあれば誰とでも手を組むというわけではない。
「ブランド側はアンバサダー契約を結んだりする前に、そのアイドルが私服や衣装などで自社の服をどのように着ているか、世界観が合っているか、かなりチェックしていると聞きます。アイドルの力を借りたいけれども、いわゆるアイドルの雰囲気とは距離を置きたいというのがブランド側の本音でもある」(A氏)
「コラボしてブランドがダサく見えてしまうこともあるので、アイドル側がどこまでブランドを生かせるかによるでしょう。なによりも、そのブランドを本気で好きであるかどうかが大事だと思います」(SINXITY氏)
ジェニーはシャネル、ロゼはサンローランと契約する前から、個人的にそれらのブランドが好きでアイテムを身に着けることが多かった。こうした背景があり、K-POPアイドルは今やビッグメゾンにとって欠かせない存在となっていった。
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