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J-ROCKジャケット進化論【1】

髭男とKing Gnuで考えるアイコン時代のアートワーク論

King Gnuはナイアガラ的 常田のクリエイティブ集団

髭男とKing Gnuで考えるアイコン時代のアートワーク論の画像5
【5】『Heavy Weather』 (ウェザー・リポート/1977年)

 スタンダード・ナンバーとなった「バードランド」が収録されている、アメリカのエレクトリック・ジャズ・バンド、ウェザー・リポートの8枚目のアルバム。ジャケットのイラストは「イエロー・マジック・オーケストラ(US版)」の「電線芸者」のルー・ビーチによるもの。

 今回の企画に際して、近年のジャケの流行りの傾向を見てきたが、やはり楠見氏の指摘するようにサブクスサービスに適したようなシンプルなデザインが多い。その一方で、最近のオリコンランキングの上位に常に位置するJ-ROCKバンド、King GnuとOfficial髭男dism(以下、髭男)という今を象徴する2組を見ていくと、彼らは細かなデザインのフォトコラージュを多用している。

 その例がKing Gnuの『Tokyo Rendez-Vous』【3】と、髭男の『Traveler』【4】だ(ちなみに、ジャケではなくMVだが、16年にコールドプレイが発表した「Up&Up」はコラージュを多用した映像表現が世界中で話題になった)。

 これについて楠見氏は「確かに、コラージュは新しいひとつの流れかもしれません」と述べたうえで、こう続ける。

髭男とKing Gnuで考えるアイコン時代のアートワーク論の画像6
【6】『WORKSHOP MU!!』 (大滝詠一/1975年)

 通算2作目のスタジオ・アルバムで、ナイアガラ・レーベルで発表した最初のソロアルバム。WORKSHOP MU!!は細野晴臣やサディスティック・ミカ・バンドのアートワークも担当。

「フォトコラージュといえば、個人的にはウェザー・リポートの『Heavy Weather』【5】が思い出されますね。作者のルー・ビーチはもともとダダイスム的な作風のアーティストでしたが、『Traveler』のデザイナーであるM!DOR!氏も、普段の作品はモノクロのファッション写真のコラージュなどの作風でどこか共通していますね。

 また、少し前から80年代的なジャケが流行っているのも影響しているのかもしれません。音楽もデザインもファッションも80年代リバイバルの中で、大滝詠一が率いたナイアガラ・レーベル的なデザインや、江口寿史的なイラストのリメイクのようなものが若い世代の目には新鮮に映っている。そういうムードも、80年代のフュージョンサウンドを代表するウェザー・リポートのようなコラージュが支持される土壌の一翼を担っているのかもしれませんね」

 また、その80年代は大滝詠一が活躍した時代だが、楠見氏は大滝とKing Gnuのとある共通点を指摘する。

「80年代、ナイアガラ・レーベルが一世を風靡しましたが、その牽引役として中山泰や、奥村靫正、立花ハジメらによる『WORKSHOP MU!!(ワークショップムー)』【6】というデザインチームの存在が大きかった。彼らは福生の米軍ハウスに住んでいて、そこは当時、ミュージシャンやデザイナー、画家などが集う、ある種のコミューンになっていて、深く交流していたんです。

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【7】『CEREMONY』 (King Gnu/2020年)

「白日」などが収録されたサード・アルバム。アートワークはPERIMETRONが担当。初動3日間で16万枚近く売り上げた。

 そういう流れでいうと、King Gnuにも常田大希が主宰する『PERIMETRON(ペリメトロン)』【7】というクリエイティブレーベルが存在し、その関係性はナイアガラ的ですよね。むしろ、文化的にそういう捉え方をすれば、King Gnuは今後ソロや別ユニットなどにも形を変えながら進化していきそうな気がするし、常田大希はかつての細野晴臣や大滝詠一のような役割を果たしていく可能性も大いにあると思います。

 実際、90年代のイギリスでは、アンダーワールドはTOMATOというデザインチームが母体になっていたことで有名です。音楽以外の表現にも詳しい彼らだからこそ、映像やステージの音とシンクロした高度なプロジェクションを構築していけたわけです。そういうのと近いものが、King GnuとPERIMETRONの周りから起こるのではないか、そんな予感もしますね」

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