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音楽伝記映画ヒットの方程式【1】

クイーンの成功にあやかりたい!音楽伝記映画ヒットの方程式

家族やメンバーと揉めて本人の音源が使えない!?

 さて、ここまで『ボヘミアン・ラプソディ』を主体に述べてきたが、音楽伝記映画の“成功例”には、ほかにどのような作品があるのだろうか?

「個人的に良いと思ったのはジョイ・ディビジョンのボーカルであるイアン・カーティスを描いた『コントロール』。本人はもとより、バンドメンバーもよく揃えたなというくらい演じた俳優が似ていたし、全体的に余計なことをしていない感じでうまくできています」(行川氏)

 その一方で、『ドアーズ』と同様に一部から失敗作の烙印を押されているのが、1970年代に活躍したアメリカの女性ロックバンド、ザ・ランナウェイズを題材にした『ランナウェイズ』だ。

「この作品はファクト云々以前に、映画としてグダグダな出来。ジョーン・ジェットを中心としたザ・ランナウェイズは活動期間こそ短いものの、パンクロックの元祖とも言われていますし、『主張するガールズバンド』として斬新な存在でした。そういった要素を抜きにして、彼女たちを普通のガールズバンドとして描いていますが、もっと取り上げるべき部分はあったと思っています」(同)

 このように、ファンを落胆させるのみならず、映画としてもイマイチと言われる作品もあるが、中にはアーティストの遺族と揉めた挙げ句、音楽伝記映画でありながら音源の使用許可がまったく下りなかった『JIMI:栄光への軌跡』や『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』といった作品もある。ジミ・ヘンドリックスとブライアン・ジョーンズという、20世紀のロック史における重要人物を扱っておきながら音源が使えないとなると、その時点で失敗作と見なされそうなものだが、これら2作品は意外な味わいを出しているという。

「ジミヘンの作品は、見た人がすぐ『ああ、許可が下りなかったんだな……』とわかるくらい、露骨に楽曲が使われていなくて、逆に『この縛りの中で、どう作品として成り立たせるのだろうか?』という見方ができました。ブライアン・ジョーンズの作品も、演奏云々より本人のスキャンダルが前面に出ていて、自殺の謎の部分とか、曲が使えない分、開き直ったような作りで映画としては面白かったですね」(同)

 作り手の技量によっては、音源が使えなかったり、音楽以外の部分に焦点を当てていたとしても、映画としてそれなりの完成度は出せるが、『ボヘミアン・ラプソディ』ほどの成功は望めないようだ。

「やはり、音楽伝記映画という以上、バンドの歴史をどう解釈しているのかや、彼らの音楽の何が素晴らしいのかを話の中心に据えるのが大切だし、制作に関わった人々が、どれくらい音楽に忠誠を誓っているかが重要だと思うんです。題材となった人々が、そのレガシーを自分自身の手で描くというと、くだらないようにも見えますが、彼らの音楽の良さを一番理解しているのは、彼ら自身ですからね。それを紹介するツールとしての映画、と考えると焦点が合うわけです」(川﨑氏)

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