新型コロナという未曾有の国難を菅首相にパスした安倍首相とアフガンを中国にパスしたアメリカ
#ラグビー
アフガンの豊富な天然資源が欲しい中国
中国は1996年から01年の第一次タリバン政権は承認しなかったが、19年にはタリバン幹部の訪中を受け入れるなど、ここ数年はタリバンに積極的に接近してきた。先月8月15日のカブール陥落前の7月28日に王毅外相が、タリバンの共同創設者バラダル師らを賓客として招き天津で会談した。その時点では反政府勢力だったタリバンを「アフガンの全局面を左右する軍事的・政治的な勢力だ。平和と和解の再建プロセスで重要な役割を果たしてほしい」と持ち上げた。
米国のシンクタンク「ランド研究所」のデレク・グロスマンが8月27日に発表した論文によると、中国の狙いはアフガンの豊富な天然資源にあるようだ。14年に発表されたレポートによると、アフガンには約1兆米ドル相当のレアアースが地中に眠っている可能性があるという。同日付の日本経済新聞も、中国商務省が20年の報告書で、アフガンに鉄鉱石や石炭、銅、リチウムなど1兆~3兆米ドル相当の地下資源があると分析したと報じた。加えて、アフガン北部のアム・ダリヤ河流域地での大規模な石油プロジェクトも中国にとってはたまらない魅力だ。
あまり知られていないが、アフガンと中国はワハーン回廊で繋がる。中国は今後、この回廊を活用し、アフガンの天然資源を手にしようとするだろう。
ジハード(聖戦)となること必至の共産中国とイスラム聖戦士との戦い
しかし、この回廊はもろ刃の剣で新疆ウイグル自治区に暮らすトルコ系イスラム教徒の独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」にタリバン、アルカイダ、IS(イスラム国)が武器、資金、義勇兵を送る時のルートとして使われる危険性もある。たとえ中国が回廊を封鎖しても、より長い国境を接するタジキスタン経由でアフガンからの過激派は容易に中国入りできる。しかも、共産党政権である中国は未来のムジャヒディン(イスラム聖戦士)から見れば、神を信じない許し難い存在だ。新疆ウイグル自治区で、イスラム教徒であるウイグル族を弾圧する中国との戦いは旧ソ連との戦い同様、再び「ジハード(聖戦)」となる大義名分を十分に兼ね備える。
ETIMがアフガンから流入するこれら過激派テロ勢力と手を組み、新疆ウイグル自治区を内戦状態にし、その鎮圧に中国が大量の軍隊を送り込み、多大な戦費を使わなくてはならない状況は、トランプ政権に引き続き台頭する中国への対策で頭を悩ますバイデン政権には願ってもないシナリオかもしれない。
それを見越して今回の米軍撤退をバイデン政権が決めたのだとしたら、見事という他ない。だとすれば、米軍は見事に「アフガン」という時限爆弾付きのラクビーボールを中国にパスし、前に進む活路を見出した。
ちなみに、成蹊学園に小学校から大学まで在籍した安倍前首相はアーチェリー部所属で、同学園の華であるラクビー部に所属したことはなかった。しかし、コロナウィルス感染拡大という厄介なラクビーボールを後任の菅義偉に上手にパスし、20年9月、12年12月の第二次安倍政権発足から7年8カ月に及んだ首相の座から退いた。ラクビー部に所属しなくとも、実社会での競争を勝ち抜くための処世術だけは16年過ごした成蹊学園でしっかりと学んだようだ。
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