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もはや謎肉レベルではない! 大阪大グループが“サシが入った培養肉”技術開発 日清と東大は「培養ステーキ肉」

もはや謎肉レベルではない! 大阪大グループがサシが入った培養肉技術開発 日清と東大は「培養ステーキ肉」の画像1
大阪大学大学院の研究ポータルサイトより

 赤身の間に脂身が程良く入った“サシ”の状態は、牛肉では高級肉とされる。そんな“サシ”が入った培養肉を作り出す技術を、大阪大学大学院の研究グループが開発した。

 大阪大学大学院の松崎典弥教授らの研究グループは、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現可能な「3Dプリント金太郎飴技術」を開発、“サシ”の入った和牛培養肉に作製に世界で初めて成功した。

 研究グループには、凸版印刷、弘前大学、日本ハム、キリンホールディングス、株リコー・リコーフューチャーズ、リコージャパン、大阪工業大学が参加した。研究の成果は、8月24日に英国科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に公開された。

 培養肉は、動物から取り出した少量の細胞を培養することで、人工的に増やして作られる肉。培養肉は、牛の成長と比較すると極めて短時間で肉が得られるため、より効率的な生産が可能となる。

 ただ、これまでの培養肉のほとんどは筋線維のみで構成されるミンチ様の肉であり、肉の複雑な組織構造を再現することは困難だった。こうした培養肉は当然、牛肉と比較すると味も食感も遠く及ばず。和牛のうま味を味わえるほどのものではなかった。

 そこで、研究グループは牛肉を構成している筋、脂肪、血管という異なる線維組織をそれぞれ3Dプリントで作製。これを“金太郎飴”を作るように重ねることで、牛肉の複雑な構造を再現した和牛培養肉を作製した。

 この「3Dプリント金太郎飴技術」が優れているのは、肉の複雑な組織構造を作れるだけではなく、“サシ”の入った和牛肉から、赤身の強い肉、脂身の強い肉といったように、脂肪や筋成分の微妙な調節を行え、肉質の違う培養肉を作製することができる点にもある。

 世界では人口増加や中所得国・低所得国の経済成長などを背景に、将来的に食肉などの畜産物の需要増加が見込まれている。国連が発表した2017年の世界の人口は76億人だが、2050年には98億人に増加すると予測されており、そうなれば食糧や水資源が不足するとみられている。

 また、日本のような超高齢社会では、健康寿命を延ばし、高齢者の身体機能の低下を抑制するためにも、食生活の中で十分なタンパク質を摂取することが重要と考えられている。しかし、日本は家畜の飼料などをもっぱら輸入に頼っており、飼料の国産化やタンパク源の多様化が、大きな課題となっている。

 こうした中で、新たなタンパク源として注目されているのが、大豆など植物由来のタンパク質から作られた「代用肉」やこの培養肉だ。

 代用肉は近年、日本でも健康志向の高まりとともに注目を集めており、すでにお馴染みかもしれない。例えば、肉の代用に豆腐を使ったハンバーグなどは、すでに商品化されている。海外では代用肉の人気は以前から高く、ヘルシー志向の強い人たちを中心に常食となっているほどだ。

 一方、培養肉はいまだに実用化・商品化されているものはない。しかし、その技術は着実に進んでいる。例えば、日清食品は2017年8月から東京大学と「培養ステーキ肉」の共同研究を開始しており、2019年には世界で初めて培養肉でイコロステーキ状の大型立体筋組織を作ることに成功している。同社は、「培養ステーキ肉」の基礎技術を2024年度中に確立することを目指している。

 このように、大学や企業などの様々な研究機関が培養肉の作製を研究し、実用化を目指している。やがて、味も食感も和牛と変わらない、あるいは和牛よりも美味しい培養肉が安価で販売され、食卓に並ぶ時代が来るのかもしれない。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2021/09/03 19:00
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