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【田澤健一郎/体育会系LGBTQ】“見世物のゲイ”にはならないプロレスラーの誇りと覚悟

 社会に広がったLGBTQという言葉。ただし、今も昔もスポーツ全般には“マッチョ”なイメージがつきまとい、その世界においてしばしば“男らしさ”が美徳とされてきた。では、“当事者”のアスリートたちは自らのセクシュアリティとどのように向き合っているのか――。(「月刊サイゾー2021年7・8月号」より転載)

【田澤健一郎/体育会系LGBTQ】見世物のゲイにはならないプロレスラーの誇りと覚悟の画像1
(写真/佐藤将希)

「『男だろ!』ってハッパをかけられたら? 男ですけど、男が好きなんです、なんて冷静に答えちゃうかもしれないですね」

 喫茶店の座席に屈強な体を縮こめ、窮屈そうに座る男はニコニコと笑う。人懐っこい笑みと、軽く体を突かれただけでもこちらが吹っ飛びそうな、山のような筋肉。そのギャップに、周囲の客も目を引かれている。

 橋本大策(仮名)、24歳。新興団体のマットで、将来のチャンピオンを目指し、汗を流しているゲイのプロレスラーだ。

 大学時代はアメフトに打ち込んでいた。たくましい肉体は、当時のトレーニングが礎だ。

「大学時代にWWE[註:アメリカの人気プロレス団体]の試合をたまたまテレビで見て。エンターテインメント性があってスゲェな、カッコいいなと衝撃を受けたんです。その後も見続けているうちに、自分でもやりたくなったんですよ」

 大学はアメフトが強いことよりも試合に出られること、教員免許が取得しやすいことを基準に選んだ、堅実な一面がある大策。しかし、日に日に膨らんでいくプロレスへの憧れは、そんな性格を一蹴。卒業にあたりプロレスラーの道を選んだ。

「もともとトレーニングが大好きで、やればやるほどたくましくなっていく自分の筋肉、体が喜びでした。でも、コーチからは『フィジカルだけではダメ、技術も必要』と注意されて。それで、プロレスならトレーニングをすればするほどホメられるんじゃないか、ホメられ続けるってサイコーじゃないか、もうプロレスラーになるしかないって感じで、はい」

 大策の話に冗談の色はゼロだ。真顔で極端なことを話す大策は、もともとプロレスラー向きの個性の持ち主だったのか、それともプロレスラーとしての自覚がそうさせるのか。

 ともあれ、厳しいマットの世界で生きることを決めた大策。フィジカルだけは入門時点でプロでも十分やっていけるレベル。早くもその年にはデビューを決める。

「ただ、デビューが早かったからこそ、プロレスの難しさも人一倍、感じました。受け身ひとつとっても奥が深い」

 早いデビューとは裏腹に、そこからは一進一退。壁を乗り越えるために練習に励んだ。

 ゲイに目覚めたのは、ちょうどその頃だった。

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