石戸諭が語るメディアの問題点、そして“良いニュース”とは?「ニュースは動詞に宿る。意見ではない」
#石戸諭
ニュースはインターネット含めた環境に迎合しちゃいけない
ーーニュースに携わる人間は今後、どうするべきだろうと考えていますか。
それは難しい問題です。誰かがサボったら負けで、今以上に状況は悪くなることは確実です。ニュース業界への風当たりは強い。ニュースに価値があると思ってくれる人たちがどんどん離れ、スポンサーをしようという人たちもいなくなっている。だけど、全くやりようがないかというとそうでもない。だから、広範な読者に振り向いてもらうことから逃げちゃいけません。
またニュースが、インターネットを含めたメディア環境に迎合しちゃいけない。その部分を忘れると短期的には成功するかもしれないけど、長期的なお客さんを手放すことになります。
僕はインターネットよりも雑誌に記事を書く時間が多くなっています。雑誌での仕事は力もつくし、すごく大切な空間だけれど、もう少し読者を振り向かせられるかなともったいなく思う。僕もたまに書かせてもらっていますが、「文藝春秋」なんてあれだけの濃い内容なのに、よく1000円前後で売っているなと驚きます。
このインタビューは、実際にライターの人も読むと思うんですが「クオリティの議論をしようよ」と言いたいです。まずはそこからだろうと。
ーーこの本自体は未来に向けた明るい内容なので、いろんな人に読んでもらいたい。
大事なことは今、踏ん張ってでも前向きな話が必要だということです。自分たちがやっている仕事を斜陽、斜陽と言っている人の周囲にお客さんは集まりません。他のビジネスなら当たり前のことじゃないですか。自分たちで落ち目だと言っている人が作った商品なんて、買おうと思いますか。思いませんよね。
そんな自虐ごっこを、いつまでもやっていてもしょうがない。メディアは今、優秀な人材が足りなくなっているとか言っていますが、斜陽産業と言っていたらいつまでたっても人は来ないですよ。
ニュースの仕事はやっぱり面白いものです。悲観しなくても、自分の足元を見つめ直してみたら、面白い仕事をやってきたという経験を多くの人が感じるはずです。歴史が変わる瞬間、何かが起こる瞬間に立ち会えたり、面白い話を聞けたりして、それを書くことができる。まぁやっぱり面白いとしか言いようがないですよね。
いつの時代もニュースは求められてきました。それはこれからも変わりません。市場規模は小さくなっても、ニュースの仕事は残る。これは忘れてはいけないと思います。
石戸諭(いしど・さとる)
ノンフィクションライター、1984年生まれ。大学卒業後、毎日新聞、BuzzFeedなどをへて独立。主な執筆媒体は「ニューズウィーク」「群像」「文藝春秋」「サンデー毎日」など。
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