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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 『魔改造の夜』赤ちゃん人形が綱を渡る

NHK『魔改造の夜』大企業の技術力VS中小企業の底力! 扇風機が走り、赤ちゃん人形が綱を渡る

コロナ禍で厳しいからこそ、魔改造をやるべきだと思った

 2つ目に行われた種目「赤ちゃん人形綱渡り」は、幼児が遊ぶ“赤ちゃん人形”を魔改造し、8メートルの綱をいかに速く登るか争う競技だ。ここで目を引いたのは、Nットーが開発した「りとるグリーンもんすたー」だった。手は4本に増殖、もはや人の形でさえない。

 でも、なぜかこの会社は応援したくなるのだ。エンジンといい、芋虫(手4本)といい、発想のおもしろさが推せる。Sライズの持つ緻密な技術力、N産が誇る圧倒的な企業力はないが、雰囲気の良さはNo.1。それに、彼らの参戦理由は切実だった。藤澤秀行社長は口にしている。

「(コロナ禍で)経済状況がなかなか厳しい中、この魔改造に挑んで町工場も元気あるぞ、やれるんだぞというところを見せつけたい」

「リーマン・ショック以降、日本の製造業の中でものづくりをやっていくのは非常に厳しい状態。ただ技術力で勝負している時代ではなくなったなあという思いはあります。魔改造してる場合じゃないかもしれない。でも、こういうときだからこそやるべきだなと思うんですね」

 この競技でNットーが選んだのは、歩幅(ストローク)ではなくピッチ(速さ)だった。自動車の金属部品を製造する企業なだけに、“速さ”=“高速回転”という発想になるのは自然だ。4本の足を使い、全速力で綱をよじ登る「りとグリ」。初登場時は悲鳴を呼んだのに、尺取虫みたいで思いのほか動きが可愛いのだ。競技が始まるや「がんばれ、がんばれ!」「もうちょっと!」と熱い声援を一身に浴びている。我々がNットーに抱く感情とまったく同じである。「犬の性格は飼い主に似る」と言うが、それは魔改造も一緒。どうか、企業として生き残ってほしいと願う。

 そして“大本命”N産は、手足を扇状に開閉して登る「メカレディZ」を開発した。他チームからどよめきが起きるほどの速さでよじ登るZであったが、ゴール目前でなぜかフリーズ。どうやら、揺れた縄が頭の停止装置に接触してストップしたらしい。

 ここからがN産の本領だ。第2試技に向けた対策として、彼らはスイッチの位置をずらすという方法をとったのだ。意地でも安全装置を外そうとしない選択は自動車メーカーとして信用できるし、スイッチの敏感な感度は安全装置の信頼度を上げている。

 そして、安定度はやはりSライズが秀でているようだ。彼らが開発したのは長い足をマジックハンドのように伸び縮みさせる「足が長いよソラちゃん」で、彼女のよじ登り方は理に適っていた。ソラちゃんの動きは人間のロープの登り方と似ている。微調整すれば、綱上りロボットとして普通に商品化できそうなクオリティだ。試技中も綱はほとんど揺れなかったし、機構的に最も優れていた。さすが、技術のSライズである。

『魔改造の夜』において、結果はもちろん最重要。しかし、それだけじゃない。参加したエンジニアチームには無条件で拍手を送りたいと思う。技術力、発想力、忍耐力、そして人間力がこれでもかと露わになる企画だ。正真正銘の真剣勝負。

 参加企業がスポンサーだったり、局とのしがらみがあったとすれば、忖度の余地はきっと生まれる。NHKだからこその番組だと思う。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/08/31 11:00
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