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世界は映画を見ていれば大体わかる#17

関根勤が持ちネタにした! 過剰すぎる空手アクションほか、千葉真一の伝説的作品たちをU-NEXTでプレイバック

関根勤が持ちネタにした! ブルース・リー張りの奇声を挙げた過剰すぎる空手アクションほか、千葉真一の伝説的作品たちをU-NEXTでプレイバックの画像1
千葉真一 公式サイトより

 千葉真一がコロナ感染による肺炎で亡くなった。ワクチンは未接種であったという。何より驚いたのはワクチンを打たなかったことではなく、千葉真一でも病に倒れるということだ。銀幕(この言い方も死語だな)で大暴れしていた千葉なら、コロナウイルスぐらい蹴散らしてしまうと思っていたのに。

 千葉真一は銀幕とテレビの両方で活躍したスターだ。川内康範原作の変身ヒーロー番組『新七色仮面』(1960)に主演し変身前と変身後、両方を演じた。スーツアクター(当時はそんな呼び名はなかったけど)を兼任できる人間などいなかった時代に、だ。

 テレビで名を売った千葉は映画にも進出する。千葉がデビューした1960年代は、日本の映画産業が斜陽化していた時代だ。理由はテレビの登場により観客を奪われてしまったからで、さらに千葉が所属していた東映は、それまでのドル箱企画だったオールスター時代劇に客がまったく入らなくなった。50年代半ばからライバルである東宝が大予算をかけた、『七人の侍』『宮本武蔵』『日本誕生』『用心棒』『椿三十郎』といった大作時代劇が観客に受け入れられており、東映の時代劇は時代遅れ、マンネリと評価を落としていた。

 そこで東映は当時の日活が石原裕次郎、小林旭の二大スターによる無国籍アクションをヒットさせていたのにあやかり、ギャング映画やアクション映画に活路を見出す。その筆頭が千葉真一主演、深作欣二監督の風来坊探偵シリーズ、ファンキーハットの快男児シリーズだ。『新七色仮面』もかくやのノースタントアクションを披露した千葉は、深作の遺作となった『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』まで17作品でタッグを組んで邦画界に旋風を巻き起こす。

 その後、任侠映画路線に舵を切った東映は当初好成績だったものの、やはりマンネリに陥り集客を落とす。そこに現れたのが実録やくざ映画だ。1973年の正月に封切られた『仁義なき戦い』は空前の大ヒットとなり、1年半の間にシリーズ5作品が立て続けに公開される。任侠道を貫く正義感の男たちとして描かれたやくざ像を破壊し金と地位のためなら仲間も子分も親も平気で裏切る外道たちが所狭しと暴れまわる作品は新たな支持層を獲得する。

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『仁義なき戦い 広島死闘編』U-NEXT 公式サイトより

 二作目『仁義なき戦い 広島死闘編』で深作と再びタッグを組んだ千葉はシリーズ屈指の人気を誇る狂人キャラ、大友勝利を演じる。大友は任侠道や古いしきたりに縛られている父親と袂を別ち、対立する村岡組と派手にドンパチをやらかす。

「なにが博奕打ちなら! 村岡が持っちょるホテルは何を売っちょるの、淫売じゃないの。いうなりゃ、あれらはお×この汁で飯食うとるんで。のう、おやじさん、神農じゃろうと博奕打ちじゃろうとよ、わしらうまいもん喰ってよ、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの。それも銭がなきゃできやせんのやで。ほうじゃけえ、銭に体張ろういうんがどこが悪いの?おう!」

 大友のセリフは今も仁義なきシリーズで1,2を争う名台詞(?)として知られる。

 仁義もへったくれもない、やりたいことをやるためにやくざをやってるんだ! というやくざの偽らざる本音を曝け出したキャラ故に人気が出て、その後のシリーズにも出る予定があったが、千葉は別の作品の撮影に入っていたので再登場は叶わなかった。その作品がカラテ映画だ。

 70年代のブルース・リーブームにあやかって東映は、カラテ映画の製作に着手。千葉主演の『ボディガード牙』で自分の流派を売り込むためのボディガード業を設立、マフィアとの戦いに巻き込まれていくカラテの達人を演じ、『殺人拳』『地獄拳』『けんか空手』とシリーズは量産。千葉は持ち前の肉体を生かしたカラテアクションを時にはハードボイルドに、シリアス、コミカルに演じた。

関根勤が持ちネタにした! ブルース・リー張りの奇声を挙げた過剰すぎる空手アクションほか、千葉真一の伝説的作品たちをU-NEXTでプレイバックの画像3
『逆襲!殺人拳』 U-NEXT 公式サイトより

 筆者が特にお気に入りなのは、『逆襲!殺人拳』(1974)だ。

 非合法の仕事を請け負うプロ、剣琢磨(千葉)は1000万円である企業の秘密を記録したカセットテープを手に入れるが、依頼人が取引を反古にしテープは奪われてしまう。怒りを露わにする琢磨はテープを奪い返し、「おれの契約は裏切られるたびに10倍に跳ね上がるんだ」と1億円を新たに要求。依頼人は外国人の殺し屋を雇いテープの奪還を試み、さらにテープを狙う第三者、若手検事にして格闘技の達人が現れ三者三様の争いが激化する。

 ブルース・リーの怪鳥音張りの奇声を挙げて、過剰すぎるアクションでカラテを揮う千葉のアクションは後に、関根勤の持ちネタにもなった。見ようによっては苦笑いすら起きるかもしれないが、千葉がやれば魅力になった。劇中、自宅で鍛錬を続ける千葉が鳴った電話を取るために壁にかかった受話器を蹴って外し、手で受け取って電話に出るという流れは「普通に手で取れよ!」ってことなんだけど、千葉がシャープなアクションで行うと「さすが千葉!」という風に映るのだ。

 池玲子とのベッドシーンも、女優である池玲子より色気があるのだ。さすが千葉! カラテ映画ブームの際に千葉の二匹目のどじょうを狙って本職のカラテ家や役者を起用した作品が多く作られたが誰も千葉を越えるスターになれなかったのは、魅せるアクション、色気のある演技が出来なかったからだろう。

 殺人拳シリーズは海外にサニー千葉名義、『The Street Fighter 』のタイトルで輸出され、世界に名を知られるように。ニューヨークの映画館で千葉のシリーズを観たクエンティン・タランティーノもそのひとりで、彼が脚本を書いた『トゥルー・ロマンス』では主人公が女をナンパして「サニー千葉の『The Street Fighter 』オールナイト3本立てを観に行こうぜ!」と誘って玉砕する(トホホ)シーンを書いた。

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