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芦田愛菜の名演に「凄み」を感じたアニメ映画『岬のマヨイガ』がコロナ禍の悩みにも効く理由

「処理しきれない気持ち」に折り合いをつける物語

芦田愛菜の名演に「凄み」を感じたアニメ映画『岬のマヨイガ』がコロナ禍の悩みにも効く理由の画像3
「岬のマヨイガ」製作委員会

 本作で重要なのは、東日本大震災が物語の前提にあることだろう。主要登場人物が出会うのは地震からの避難所であるし、震災後の瓦礫と化した街の様子も映し出されている。その上で、両親を事故で亡くした8歳の女の子、辛い過去を持つ17歳の少女の「心の傷」も丹念に描き出していくことが重要だった。

 東日本大震災により多くの人が傷つき、今もなおその傷は癒えない。災害だけでなく、長い年月が経っても忘れることができない、ありとあらゆる不幸もこの世にはある。実際に劇中では「なんで私だけがこんな目に遭うのだろう」というネガティブな物言いもされるのだが、物語では現実でそうした悩みを持つ人へ、「折り合い」をつけるための手がかかりを与えるような、優しさを感じることができた。

 実際にプロデューサーの松尾拓は、本作が東北大震災を描いた作品であることを前提として、「願わくばこの作品が誰かの心の中の『処理しきれない気持ち』を、少しでもやわらげることができたなら」と語っている。今もまたコロナ禍が長く続き、誰もがこの未曾有の事態に「処理しきれない気持ち」を抱えているだろう。この時代でこそ、映画『岬のマヨイガ』の終盤で提示されるメッセージが、救いになる方はきっと多いと思うのだ。

 正直、クライマックスの展開に強引さを感じてしまった、シュールに見えてしまう絵面があったのは残念だったりもしたが、それ以外は「今の世に必要な作品だ」と心から思うことができた作品だ。観る人を選ばない、心がほっこりするアニメ映画を期待して、ぜひ『岬のマヨイガ』を劇場で楽しんでほしい。

 ちなみに、『岬のマヨイガ』は「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」という、東日本大震災で被災した東北3県を舞台とするアニメ作品のプロジェクトの1つであり、すでに2021年4月から6月まで宮城県岩沼市を舞台としたアニメ『バクテン!!』が放送され(映画化も決定)、2021年12月3日にも福島県いわき市に実在するリゾート施設を舞台としたオリジナルアニメ映画『フラ・フラダンス』も公開予定となっている。アニメで長期的な被災地支援をする試みも、とても応援したいものだった。こちらも合わせてチェックしてみてはいかがだろうか。

芦田愛菜の名演に「凄み」を感じたアニメ映画『岬のマヨイガ』がコロナ禍の悩みにも効く理由の画像4
「岬のマヨイガ」製作委員会

『岬のマヨイガ』
8 月 27 日(金)全国ロードショー

配給:アニプレックス 
©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

【スタッフ】
原作:柏葉幸子「岬のマヨイガ」(講談社刊) 監督:川面真也
脚本:吉田玲子 キャラクターデザイン原案:賀茂川 音楽:宮内優里
制作:david production 製作:「岬のマヨイガ」製作委員会 配給:アニプレックス
助成: 文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会【公式サイト】
misakinomayoiga.com
【公式 ツイッター】
@misakinomayoiga

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2021/09/17 13:55
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