【厚労省発表】新型コロナ禍でも違法な時間外労働が約9000件! ブラック労働改善されず事業所側の意識の低さ露呈
#厚生労働省
新型コロナウイルスの感染拡大により、経済活動が縮小している中においても、過重な長時間労働が行われているようだ。厚生労働省が8月20日に発表した「労働基準監督署の監督指導の結果」で、その実態が明らかになった。
この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象として、20年4月から21年3月までに2万4042事業場に対して実施したもの。
2020年度の結果は、73.2%の1万7594事業場で労働基準関係法令違反が認められた。このうち違法な時間外労働は8904事業場で行われており、時間外・休日労働が最長の者を確認したところ、2982事業場で1カ月80時間を超えており、100時間を超えていたのは1878事業所、150時間を超えていたのは419事業場、200時間を超えていたのは93事業場あった。
いずれについても、19年度よりは減少しているものの、違法な時間外労働は37.0%の事業所で行われており、80時間を超えるのは33.5%、100時間を超えるのは21.1%、150時間を超えるのは4.7%、200時間を超えるのは1.0%の割合だった。(表1)
違法な時間外労働の業種別では、商業がもっとも多く2184事業所、次いで製造業の1749事業所、派遣業、警備業、情報処理差ビス業などのその他事業が964事業所だった。
賃金不払残業は6.5%の1551事業場で認められた。前年度の2559事業所(7.8%)よりが減少しているものの、いまだに1500を超える事業所で賃金の不払いが行われている。業種別では、商業が395事業所、次いで製造業の259事業所、接客娯楽業の179事業所となっている。
過重労働に対する医師による面接指導等の健康障害防止措置が未実施な事業所数は、19.2%の4628事業所に上った。前年度の6419事業所(19.5%)からは減少しているものの、4000を超える事業所が健康障害防止措置を実施していない。業種別には、商業が1395事業所、製造業が678事業所、接客娯楽業が556事業所となっている。
さらに、過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善の指導を行った事業所は40.3%の9676事業所もあった。前年度の1万5338事業所(46.5%)からは減少しているものの、健康障害防止に対する事業所側の意識の低さが現れている。
改善指導の内容は
・面接指導等の実施―1312事業
・長時間労働による健康障害防止対策に関する調査審議の実施―1595事業所
・時間外・休日労働時間を月45時間以内への削減―5188事業所
・時間外・休日労働時間を月80時間以内への削減―4419事業所
・面接指導等が実施出来る仕組みの整備等―494事業所
また、労働時間の把握が不適正な事業所も17.9%の4301事業場あった。労働時間の管理方法を確認したところ、2109事業場で使用者が自ら現認することにより確認し、9088事業場でタイムカードを基礎に確認し、4497事業場でICカード、IDカードを基礎に確認し、7126事業場で自己申告制により確認し、始業・終業時刻等を記録していた。
当然のことながら、これらの違法な時間外労働、賃金の不払い、過重労働による健康障害防止措置が未実施の事業所に対しては、是正勧告が行われた。
ある製造業関係者は、「新型コロナの感染拡大防止により、出社人数を削減した。特に、非正規雇用者を相当数解雇したことで、現場での人員が不足しており、これが労働時間の長時間化につながっている」と指摘している。
新型コロナは在宅勤務、テレワークの推進により出社人数を減少させる半面、人手不足という事態を招いている可能性も出ている。
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