50年ぶりに発掘された歴史的な野外フェス!黒いウッドストック『サマー・オブ・ソウル』
#映画 #パンドラ映画館
差別社会に絶望した女性シンガーのメッセージ
「黒いウッドストック 」の後半を締めくくるのは、女性ピアニスト&シンガーのニーナ・シモン。多くのゴスペルシンガーたちと同じように、彼女も教会で育った。母親が牧師だったことから、幼い頃から教会のピアノに触れ、名門ジュリアード音楽院にまで進んでいる。黒人初のクラシックピアニストになることを目指したが、人種的偏見の壁に阻まれて、その夢を叶えることはできなかった。生活費を稼ぐために、バーでピアノの弾き語りを始め、ジャズ、ポップス、フォークなどのジャンルに囚われない新しいタイプのミュージシャンとして人気を集めるようになっていた。
ニーナ・シモンは、4人の黒人少女たちが教会で爆殺された事件を歌った「ミシシッピ・ガッダム」など社会的メッセージ性の強い曲を次々と発表し、1960年代の公民権運動の高まりとシンクロする形で時代の寵児となる。彼女がステージで披露する新曲「トゥ・ビー・ヤング、ギフティッド・アンド・ブラック」は、のちに公民権運動のシンボル曲となった。
だが、彼女の言動は次第に過激さを増し、米国のショービジネス界での居場所を失ってしまう。社会的メッセージを唱える黒人の女性シンガーに対する風当たりは、想像以上に強かった。ブラックパンサー党が警備に当たったこのライブイベントを終えたニーナ・シモンは、翌1970年にはDVを振るう夫と別れ、米国を出て、アフリカや欧州を放浪する生活を送ることになる。
ニーナ・シモンが歌い、有名になった曲のひとつに「自由になりたい(I Wish I Knew)」がある。こんな歌詞内容だ。
「私は望む
私の胸の中にあるすべての愛を分かち合えることを
私たちを隔てるすべての障害を取り除けることを
私が生きている意味をあなたに知ってもらえることを
そうすれば、あなたは理解し、同意するはず
すべての人は自由であるべきことを」
ステージ上で歌い、演奏し、踊っている間だけ、彼女たちは自分の魂を解放することができた。映画『サマー・オブ・ソウル』は、テレビ放映されることのなかった革命的なライブを記録した作品となっている。そして、50年の歳月が経っても、人権問題はまるで解決していないことに愕然とさせられる。
『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』
監督・製作総指揮/アミール“クエストラブ”トンプソン
出演/スティーヴィー・ワンダー、ニーナ・シモン、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、マヘリア・ジャクソン、B.B.キング、フィフス・ディメンションズほか
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン 8月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
c)2021 20th Century Studios.All rights reserved.
https://searchlightpictures.jp/movie/summerofsoul.html
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