50年ぶりに発掘された歴史的な野外フェス!黒いウッドストック『サマー・オブ・ソウル』
#映画 #パンドラ映画館
もうひとつのウッドストックをご存知だろうか? “愛と平和と音楽の祭典”と謳われた伝説のロックフェス「ウッドストック ・フェスティバル」が開かれたのが1969年の8月だった。40万人を超える観客がニューヨーク州郊外の避暑地に押し寄せた一大野外フェスとしてロックファンに記憶されているが、ほぼ同時期に注目すべき音楽の祭典が同じニューヨーク州のニューヨーク市内でも行われていた。同年6月29日から8月24日まで6回にわたって開催され、延べ30万人を動員した「ハーレム・カルチャラル・フ ェスティバル」が、もうひとつのウッドストックだ。
こちらに出演したのは、若き日のスティーヴィー・ワンダー、日本でも人気のフィフス・ディメンション、ウッドストックでも観客を熱狂させるスライ&ザ・ファミリー・ストーン……、といった超一流のブラックミュージシャンたちだった。だが、この「黒いウッドストック」と呼ばれた記念碑的ライブイベントは、なぜか人々の記憶から忘れ去られてしまう。
1968年に暗殺されたキング牧師の1周忌イベントとして企画された「ハーレム・カルチャラル・フェスティバル」の様子はテレビ放送用にビデオテープに収められていたものの、黒人たちの音楽イベントに当時のテレビ局を牛耳っていた白人のエラい人たちはまるで興味を示さなかった。そのため、47巻あるビデオテープは半世紀にわたって倉庫で眠ることに。かくして、幻のフェスとなってしまったのだ。
このお宝映像の山を、リストアした上で、編集&監督したのが人気バンド「ザ・ルーツ」のドラマーであるクエストラブ。エンターテインメント性はもちろん、BLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動の流れを汲む、現代的なライブ映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』として蘇らせている。
映画の序盤を飾るのは、当時まだ19歳だったスティーヴィー・ワンダー。ピアノの弾き語りのイメージが強いスティーヴィーだが、意外にもドラムを叩いての登場となる。ドラムを巧みに奏でるというよりは、アフリカ系の打楽器を思わせるエネルギッシュな演奏だ。さらに「ブルースの巨人」B.B.キング、ザ・バンドの解散ライブを記録した映画『ラスト・ワルツ』(78)にも出演したステイプル・シンガーズ、「マイ・ガール」を大ヒットさせた元テンプテーションズのデヴィッド・ラフィンといった顔ぶれが続く。ウッドストック以上の盛り上がりを見せる。
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