「記憶を消されたひぐち君」と「角野卓造」 ドッキリは何回目?
#テレビ日記
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(8月15~21日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
ひぐち君(髭男爵)「ひぐちカッター! びっくり」
テレビで実演される催眠術が本当かどうかは知らない。けれど、そこを疑うと話が一歩も前に進まなくなるので、ここでは本当という前提で話を進める。
21日の『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ系)で、実験的なドッキリ企画が放送されていた。題して「催眠術で記憶を消せば、同じドッキリをもう1回かけられちゃうんじゃないか大検証SP」。
催眠術師はバラエティ番組でおなじみの十文字幻斎。ターゲットに指名されたのは、十文字いわく「何千人に1人というレベル」で催眠術がかかりやすい、お笑い芸人のひぐち君(髭男爵)だ。
健康番組のロケと聞かされてやってきたひぐち君。検尿のためトイレの個室に入る。しかし、そこに爆竹的なものを搭載したネズミのおもちゃが入ってきて爆発。同番組では名物の、とてもシンプルなドッキリだ。見事ひっかかり、個室のなかで慌てふためくひぐち君。ドッキリは大成功だ。
が、ここまでは今回の企画のほんの入口。ドッキリの撮影が終わったと思っているひぐち君は、控室へと戻る。そこには催眠術師・十文字が待ち構えている。「眠って~」の声を合図にひぐち君は即座に眠らされ、記憶を消されてしまう。
数分後、控室の目覚まし時計が鳴り、ひぐち君が目を覚ます。2回目のドッキリが始まる。先ほどと同じ手順で進む撮影。しかし、彼は状況を疑うことはなく、同じドッキリに再び引っかかってしまう。
その後、催眠術で記憶を消す→ドッキリにかける→催眠術で記憶を消す……が繰り返され、ひぐち君は約4時間のあいだに計8回、同じドッキリにかけられた。奇妙なのは、彼の一連の言動がほぼ同じことだ。一部を挙げると――
・控室でのスタッフとの打ち合わせで「健康診断は10年ぐらい行っていない」と発言。
・オープニングの撮影で持ちギャグ「ひぐちカッター」をし、スタッフに切れ味の良さを指摘されると「あざす」と照れ笑い。
・『ドッキリGP』だとネタバラシされると「まさか今の俺に来るとは」と自虐。
・「歴史上の誰が考えたドッキリ?」と問われると「エジソンとかっすか?」と回答。
・「俺、本当にメシ抜いて来たんすけど」とコメント。
・ロケのシメは「ひぐちカッター! びっくり」と少しアレンジした持ちギャグ。
繰り返される同じ光景。終わらない無限ループ。ひぐち君の個々の発言は一言一句すべて同じわけではなく、「まさか今の俺に来るとは」が「今の俺に来ます?」になったりするのだけれど、そうやって毎回少しずつ違う(けれどだいたい同じ)ところがむしろリアリティを帯びる。
そして、そんなひぐち君を見ていると、なんだか外からの同じ刺激に同じ反応を返す機械を見ているような気分にもなってくる。今回の企画にはホラー作品めいた怖さがあるのだけれど、それは人間の記憶が簡単に消されてしまう怖さよりも、人間が自動機械みたいになっていることに対する怖さが根底にあるのだろう。私たちは普段いくつかの選択肢から自由に自分の行動を選んでいるように思っているけれど、実際にはそんな選択肢はなかった。どこにも分岐点はなく、ずっと一本道だった。そういう怖さというか。
さて、催眠術が本当だとしたら、との前提で話を進めてきた。私たちにとって自由とは、みたいな結末になったわけだけれど、では、催眠術が本当ではなかったとしたら? ひぐち君に自由はあったのでしょうか。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事