医師不足が顕著な地方で初任給が増額 日本内科学会が病院毎のオープンデータで分析、都市部と格差あらわ
#医療従事者
初期研修医の基本給の全国平均は35万1199円。19年の大卒初任給21万200円と初任給で10万円以上も高額になっている。富山大学が名古屋大学附属病院と共同で実施した分析で明らかになった。
分析は、オープンデータを用いた社会医学実習として全国の内科医師の年間退院患者数、研修医の給料とマッチング率について行った。
日本内科学会が公表している病院毎のオープンデータ、各病院がホームページで公表する初期研修医の基本給等のデータを利用。全国423病院(大学病院を除く)を対象とし、医師の1人当たりの年間退院患者数、初期研修医の基本給について、病院が立地する市町村の人口規模によって異なるかを分析した。
人口規模は10万人未満、20万人未満、30万人未満、40万人未満、60万人未満、100万人未満、200万人未満、200万人以上の8区分とし、東京23区は200万人以上に分類した。
初期研修医の基本給は 345 病院が公表しており、分析によると全国平均は35万1199.3円だった。市町村の人口規模別の分析では、10万人未満の市町村で38万2083.8円と最高値を示す一方、200万人以上と東京 23区内の病院では30万5635.1円と最低値だった。この結果、月給と人口には反比例の関係が見られた。
さらに、各病院に初期研修医として就職を希望する志願者総数を病院が定める定員で見ると、全国平均は101.9%だが、200万人未満の都市の病院では114.0%、200万以上と東京23区内の病院では142.7%と非常に高く、より少ない人口規模の市町村では100%未満がほとんどだった。
これらの結果、就職希望者が多いことが影響し、大都市の病院は基本給も少なくなっていると見ることができる。これは、医師も大都市の病院を選択していることの表れであり、大都市部への人口集中、地方の過疎化と同様の傾向にあることがわかる。
医師1人当たりの年間退院患者数は、全国平均では110.3 名だったが、人口200万以上と東京23区内の病院では88.4名で、全国平均に比べて21.9名、人口30万人未満の市町村と比べて37.5名も年間の患者担当数が少ないことが判明した。
このことは、大都市部の病院に比べ、地方の病院では医師1人当たりが受け持つ患者数が多いことの表れであり、都市部の病院に比べ、地方の病院の医師の方が診察・治療件数が多く、地方の病院の医師に大きな負担がかかっていることになる。
各病院の平均退院患者数数は年間5000人程度で人口規模による差は見られなかったが、常勤内科医数と後期研修医数は人口200万以上と東京23区内の病院では、常勤内科医数は全国平均(37.7名)より9.7名、後期研修医数は全国平均(10.2名)より5.6名、それぞれ多いことがわかった。
これは、都市部の病院では地方の病院に比べて内科勤務医数が多く、そのため医師1人当たりの年間退院患者数が少ないと言える。
これらの分析の結果、医師は初期研修医の時点から就職先に大都市の病院を希望する者が多く、そのため医師不足が顕著な地方の病院の方が初任給は高くなっている。加えて、都市部の病院では地方の病院に比べ、医師1人が受け持つ患者数が少なくなっていることがわかった。
医師も大都市を選好する者が多く、地方では医師数が不足する傾向にあるため、都市部と地方の医療体制に格差が生まれる原因になっているようだ。同大では、「このように、医師数の少ない非都市部の病院では、新型コロナ感染症などの対応は都市部の病院に比べてより困難だ」と予想している。
新型コロナウイルスは大都市部を中心に感染拡大が進んでおり、これに伴い、大都市部での医療崩壊が叫ばれているが、より医療体制が手薄な地方での感染拡大は、都市部と比較にならないほどの悲惨な状況を招きかねない。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事