トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > 「きょうだい児」はなぜつらさを抱えるのか

障害者のきょうだい「きょうだい児」は、なぜつらさを抱えるのか? 専門家に話を聞いた

障害者のきょうだい「きょうだい児」は、なぜつらさを抱えるのか? 専門家に話を聞いたの画像1
Getty Imagesより

 昨今、家事や育児、介護などを大人のように担う子ども=「ヤングケアラー」への注目が高まっている。

 その「ヤングケアラー」の一種に挙げられるのが、障害のあるきょうだいのいる子ども=「きょうだい児」だ。「きょうだいの世話のために遊びに行けなかった」「自分は弟・妹であるのに、兄・姉のような役割をしてきた」といった悩みを抱えたきょうだい児も少なくない。

 だが、きょうだい児の抱えるつらさはこうした“ケア”の問題だけではない。いじめや親からのプレッシャー、親亡き後の不安など、その悩みは多岐にわたる。

 きょうだい児の抱えるつらさや今後の課題について、社会福祉学の専門家である明星大学の吉川かおり先生に話を聞いた。

※きょうだい児が成人している場合、「きょうだい」「きょうだい者」といった呼び方をすることもありますが、本稿では「きょうだい児」で統一します。

きょうだい児が経験する「つらさ」

——きょうだい児が抱えるつらさにはどのようなものがあるのでしょうか。

吉川かおり先生(以下、吉川):私はきょうだい児が直面する問題をつらさとして類型化したことはないんです。同じ経験をしてもつらいと感じるかは人それぞれです。

 その前提で、2007~2008年に財団法人国際障害者年記念ナイスハート基金が行った調査を紹介します。それによると、きょうだい児が小学生の頃に「他の家族とうちは違う」と感じたことがある割合は、64.6%でした。

 その内容は、「障害児がいるため家族がまとまっていた」など肯定的なものもあったのですが、全体的に否定的な回答が多く、「兄弟姉妹がかんしゃくを起こすので大変だった」「障害児が差別的な扱いを受けていた」「家族旅行に行けない」「親の実家への出入り禁止」「周囲から白い目で見られる」「親に甘えられなかった」「自由がない」「親の仲が悪かった」など、違いを感じた出来事は多種多様です。こういったものが、つらさを生むことにつながるのだと思います。

 また、海外のきょうだい支援団体と情報交換をしていると、障害のあるきょうだいから性的被害を受けたのに、親に取り合ってもらえなかったといった事例も聞きます。

——障害児者のいる家庭で育って、つらかったと言う人とつらくなかったと言う人がいるのはなぜなのでしょうか。

吉川:理由はいくつかあります。まず、もともとの性格があります。物事を大らかに捉える人もいれば、細かいことが気になる人もいるので、同じ出来事が生じても受ける影響は異なるでしょう。

 二つ目に、きょうだい児がどういった社会的障壁に出会ってきたかです。例えば、家族で出かけると他人にジロジロと見られたり、「近寄ったらだめ」と言われたり、学校でいじめられたりという経験をしている人もいれば、あまり遭遇しなかったという人もいます。

 三つ目に、家庭の事情です。もともとの夫婦仲の良し悪しがあり、障害のある子が生まれて大変なことがあっても協力して乗り越えられる場合もあれば、夫婦仲が悪いうえに障害のある子が生まれて困難に耐え切れず、両親の不仲に拍車がかかり、きょうだい児が巻き込まれるといったケースもあります。

 四つ目に、障害児の心身機能の状態を補う手段をどう家庭に取り入れてきたかです。特に大変になることが想定されるのは、①介護度が高い場合、②行動障害が重い場合です。

①介護度が高いとは、例えばオムツ替え、入浴介助、食事の介助などに親の手がかかることできょうだい児にも影響が出る状態です。そこで福祉サービスをうまく利用できれば、親の息抜きにもなり、きょうだい児とも向き合う時間がとれるはずです。

②行動障害はさまざまな要因で生じますが、例えば、ちょっとした変化にも敏感で、家族がメガネを替えたり、髪を切ったりといった些細なことでもパニックになるなど、強すぎるこだわりが見られる場合です。そのときにきょうだい児が理解できない理由で攻撃対象になることがあり、感情的にも傷つきます。

 また、社会から向けられる「目」もありますね。特に女の子の場合、女の子“らしさ”を要請する社会の影響もあり、障害児のケアをすることを当然のように要求され、つらくても我慢をしてしまって、誰かに相談しても「仕方ないでしょう」「頑張っていて偉いわね」と言われたり、自分の心に寄り添ってくれる人がいなかったりで、人間不信になってしまうこともありますね。

1234
ページ上部へ戻る

配給映画