九州ローカルからU-NEXTなどで全国拡大!往年の戦隊スタッフが多数参加する『ドゲンジャーズ』はヒーローの光と影を照らす!?
#ローカル
前回、アメリカのはぐれヒーローもの『ドゥーム・パトロール』を紹介したが、今回は日本のはぐれヒーローものだ。
日本のヒーローものといえばウルトラマンに仮面ライダーといったところがすぐに思い浮かぶが、『ドゲンジャーズ』はローカルヒーローものだ。
ローカルヒーローとはデパートの屋上や遊園地などで開催されるヒーローショーの影響を受け、版権ものではないオリジナルのキャラクターを地方企業や商店街、自治体などが作り出して、町おこしなどに利用されるキャラクターだ。と聞くと“ゆるキャラ”が想像されるが、ゆるキャラは可愛らしい(そうではないものもあるけど)外見であればコンセプトなどに拘らないが、ローカルヒーローは「悪の組織と戦い平和を取り戻す」というヒーローもののステレオタイプながら、はっきりとしたモチーフが存在している。
『ドゲンジャーズ』では、福岡のローカルヒーローが一堂に会する。ヒーローたちは福岡の平和を日々守っていたが、博多湾に浮かぶ能古島で行われたリアリティテレビ『HERO HOUSE』(テラスハウスみたいなやつ)の収録後、福岡に帰った彼らを待っていたのはヒーローたちのいない間に悪の秘密結社によって支配され、モヒカンの悪漢たちに蹂躙され修羅の国と化した福岡だった!
テレビ収録で美女を相手にすっかり骨抜きにされたローカルヒーローたちは、悪の秘密結社の怪人たちに手も足も出ない。既婚者だったため収録に参加していなかった薬剤戦師オーガマン(製作主体の大賀薬局がつくったローカルヒーロー。キャッチコピーは「病気になったら、薬飲んで寝ろ!」)の活躍によって事なきを得るが、偶然その場に居合わせてしまったごく普通の青年、田中次郎をかばったためにオーガマンは傷を負い、勇気があると認めた田中に新たなヒーロー、“ルーキー”として戦う力を継承する。単に「幼馴染に会うために福岡にやってきた」だけなのに、福岡を巡る戦いに巻き込まれた田中は本物のヒーローになれるのか?
本作に登場する“悪の秘密結社”は実在するイベント会社だ。代表取締役社長の笹井浩生氏は学生時代にヒーローショーのアルバイトをした経験から自分でもショーをやりたいと思うようになり、時計店勤務時代にウォッチマンというヒーローを非公認で作ってしまうほどの入れ込みぶりだった。
そこで独立しイベント会社を作るときにヒーローではなく、悪役の会社をつくってしまうというところが奮っている。笹井氏は「ローカルヒーローはたくさんいるけど、悪の組織はない」というところに目をつけ、悪役専門会社としてスタート。『ドゲンジャーズ』本編にも登場するヤバい仮面、メイド執事、シャベリーマンに修羅王丸は株式会社悪の秘密結社が産んだキャラクター……悪役たちだ。
本来ヒーローものの悪役たちは正義側に倒されるために存在しているが、本当は悪役の方が主役なのでは?と思わざるを得ない。ヒーローは悪役が起こす悪事に対応することがほとんどで、常に受け身である。ヒーローはレインボーマンみたいに自分の正義に悩むことが多々あるが、悪役の行動には迷いがない。世界征服のために街を爆破し、幼稚園児のバスを襲う。仮面ライダーだってショッカーによってつくられた怪人なのだ。ここからもわかる通り、ヒーローがいて悪がいるのではなく、悪がいるからヒーローが存在するともいえる。
ヒーロー以上に悪役のキャラが立ちまくっている『ドゲンジャーズ』は、ヒーローものの本質を捉えた傑作だ。
ローカルヒーロー大集合番組の『ドゲンジャーズ』だが、ただのローカルヒーローものに収まっていないのはスタッフ、役者などに「本職」の人々が関わっているというところだ。
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