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週刊文春、ついに中吊り終了――”大転換”でもひた隠すあの騒動

週刊文春、ついに中吊り終了――大転換でもひた隠すあの騒動の画像1

 雑誌文化のひとつが終焉を迎えたーー。

 週刊文春(文藝春秋社)が、電車内の天井から吊らされる「中吊り広告」を8月いっぱいで撤退するというのだ。出版関係者が解説する。

「かつては中吊り広告で関心を引き寄せ、駅の売店で雑誌を買ってもらったもの。ただネックは広告の校了が紙面の校了の2日前で、突然の大事件やスクープに対応できなかった。ネット時代になり、そのタイムラグが一層、編集者の悩みのタネになっていました。雑誌の売り上げが激減し、広告費を削っていく中、当然の流れでしょう」

 これに呼応するように、週刊新潮(新潮社)も9月いっぱいで終了すると発表した。

「『週刊現代』(講談社)など大手週刊誌は軒並み撤退していましたが、体力のある両誌が踏み切るとは時代の大転換を感じさせます。『浮いたおカネをデジタル戦略に投資する』との事ですが、これは、硬派から軟派まで幕ノ内弁当のように記事が盛り込まれる”雑誌”の役割を終えた裏返しでもある。雑誌衰退を示すエポックメーキングな出来事と言えそうです」(同前)

 文春の中吊りと聞いて、ベテラン編集者が感慨深く思い起こすのは、1994年のJR東日本とのバトルだ。

「同社の最大労組・JR東労組が、革マル派に支配されているばかりか、本体の経営にまで口を出しているという連載記事。中身は概ね事実で、タブーに斬りこむ週刊誌の真骨頂でした。ところが図星を指されたJR東日本は激怒。管内にある駅の売店『キヨスク』での販売をストップ、電車の中吊り広告も拒否したのです」(ベテラン編集者)

 言論封殺以外の何物でもないが、当時、文春の売り上げは90万部あり、うち11万部をキヨスクに頼っていた。そこを絶たれた文春は根を上げ、謝罪広告を出して”全面降伏”をしたのである。

「その中吊りを切り捨てるのですから隔世の感がありますね」(同前)

 だが他社の現役編集者が指摘するのは、2017年の騒動だ。

「文春の営業担当者が、同日発売でライバルである週刊新潮の中吊り広告を盗み見していたと、新潮が写真付きですっぱ抜いたのです。文春は新潮の中吊りを見て、後追い取材をしていた事も発覚。2016年にタレントのベッキーの不倫など”文春砲”で鳴らした時期だったので、世間から総スカンをくらいました」

 もっとも、文春の行為は”姑息”ではあるが違法性はなく、業界内では同情の声もあったというが…天。

「広告の取り扱い業者は限られ、出版社との付き合いは深いので、どこもやろうと思えばできますからね。文春からすると『新潮もやればよかったのに』というスタッフもいたはず。むしろ文春は営業と編集部がうまくタッグを組んでいると、うらやましく思ったほどです」(現役編集者)

 問題はその後である。

「当時の編集長は、”文春砲”生みの親の新谷学氏ですが、新潮記者の直撃に『記事の盗用や書き換えはない』と否定しました。ただ、実際に行われていた事は文春社内で周知の事実。新谷氏の対応に、編集部員はがっかりしたと言います。あげくに新谷氏が編集部員に説明したスピーチが、新潮の翌週号に載った事から、犯人捜しが始まった。そもそも文春記者の仕事は、他社のそうした内実をアバくものなのに、自分らがやられて怒るとは、都合がよすぎます」(同前)

 しかも、この騒動は文春の歴史から葬り去られているという。

「昨年刊行された柳澤健著『2016年の週刊文春』(光文社)では、文春社員や記者が全面協力し、新谷氏も自らの失敗談なども赤裸々に語っています。ところがどういうわけか、盗み見騒動に全く触れていない。また今年7月には、新谷氏は『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』(光文社)を上梓しましたが、そこでもスルーです」(同前)

 騒動をモノともせず快進撃を続けてきた文春だが、栄枯盛衰は世の習いでもある。

与良天悟(芸能ライター)

1984年、千葉県出身のウェブメディア編集者。某カルチャー系メディアで音楽や演劇を中心にインタビューなどを担当するほか、フリーで地元千葉県の企業の記事なども請け負っている。

よらてんご

最終更新:2021/08/20 20:00
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