ミルクボーイ駒場をあえて降板させた海原やすよ・ともこの親心…芸人が大阪でガチトークを見せる『やすとものいたって真剣です』
#ミルクボーイ #関西バラエティ番組事件簿
全国で人気のタレントを多数輩出し、またローカル番組らしい味わいがクセになる、関西制作のテレビ番組に注目する連載「関西バラエティ番組事件簿」。
今回取り上げるのは、朝日放送の『やすとものいたって真剣です』(毎週木曜日放送)だ。どん欲な制作姿勢で知られる深夜放送枠「ナイト in ナイト」の一枠を2020年4月より担う同番組。姉妹漫才師の海原やすよ・ともこを司会に据え、「他人の人生を題材に、漫才のごとく喋りまくる」というコンセプトで構成されている。
筆者はライター業を約20年続けており、そのなかでたくさんのお笑い芸人のインタビューをおこなってきた。取材時、よく気づかっていたのは「インタビュー相手である芸人をスベらせてはいけない」ということ。パスをうまくまわして、「おもしろいコメントを引き出そう」「芸人記事だから笑える内容にしなければいけない」と考えることが多かった。
でも、それはインタビュアーの過剰意識である。「うまくボケてもらわなきゃいけない」なんて、おこがましい考え方なのだ。それは芸人が街で突然「なんかオモロいことやれ」と雑に振られることと、さほど違いはない。そもそも芸人は、こちら側がどんなパスを出してもきっちり、ゴールを決めてくれる。ライターをずっとやってきて近年、ようやくそのことに気づけた
『いたって真剣です』では、「いかにも」というネタふりがない。やすともが60分間、ゲストで登場する芸人のことを真剣にみっちりと掘り下げていく。ただし、真面目だけどちゃんと笑える。だから見応えがすさまじい。
ミルクボーイは「こんなに真面目な話で良いんですか」と戸惑い
番組のスタート直後は、「真剣トーク」の意識が強すぎた感は確かにあった。筆者は2020年3月、ミルクボーイの駒場、内海がゲストで登場した初回収録を現地取材した。そのとき繰り広げられたのは、ミルクボーイが漫才から遠ざかっていた時期のエピソード。やすともは、後輩芸人からその当時「昔のミルクボーイには憧れていたけど、今は嫌い。漫才を見たら悲しくなるから見に行かない」という話を聞かされたことを明かす。やすともは、ミルクボーイに再び漫才に力を入れてもらうため、自分たちの番組でレギュラーをつとめていた駒場をあえて降板させたという。やすとも曰く「“レギュラーなし顔”のほうが良い」と。やがてミルクボーイは一念発起。漫才の腕を磨き上げ、『M-1グランプリ2019』でチャンピオンに輝いた。
濃い内容の話が続き、ミルクボーイが「こんなに真面目に話していて良いんですか?」と躊躇する場面もあった。やすともは「ええねん、ええねん。そういう番組やから」とフォロー。芸人がここまでガチで喋る番組は珍しい。だからこそ、当初はそういう戸惑いも見受けられた。ただ回を重ねるごとに「真剣トーク」のスタイルが確立。やがて真面目さと笑いが絶妙なバランスで成り立つようにもなっていった。
8月5日にオンエアされた、なかやまきんに君の出演回は特にすばらしかった。お笑い芸人でありながらボディビルダーとしても活躍。何年にもわたって「東京ノービスボディビル選手権大会」という大会に出場し、頂点まであと一歩という結果が続いていたなか、2021年、ついにミスター75キロ超級で優勝。大会後、人目をはばからず涙を流す彼の姿をオンエアするなど、彼がどれだけ「筋肉」に情熱を注いでいるかを伝えた。
最近では自身のYouTube番組で、ボディメイクについて真摯に向き合いながら視聴者にレクチャーする姿が好感を集めている、きんに君。『いたって真剣です』ではやすとものうまい相槌もあって、彼の核の部分をさらに知ることができた。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事