『ドント・ブリーズ2』は1よりさらに残酷に… ネタバレなしで語る盲目の老人によるバトルホラーの魅力
#ホラー #ドント・ブリーズ2
対決する両者ともが「正しくなさ」を抱えている
前作も本作も、対決をする両者ともが「正しくない」ことも、『ドント・ブリーズ』という作品の特徴と言えるのではないだろうか。前作から、家に押し入る泥棒3人と、とある「おぞましい事実」を隠していた盲目の老人のどちらもが「正しくない」人間であるので、「どちらを応援すればいいんだ?」となってしまう感覚があった。その居心地の悪さも含めた、それぞれの思惑が交錯する攻防戦こそが面白かったのだが、今回はその「正しくなさ」にも新たなツイストを加えていた。
何しろ、(前作を踏まえても)「孤独に暮らしていた盲目の老人がなぜ少女を育てているのか?」と考えると、「結婚してまともに育てている」なんてことはあり得ない。しかも、老人は過保護とか過干渉とかいう領域を超え、幼い少女の生活のほぼ全てをコントロールするかのような言動をしている。間違いなく、そこには老人の狂気、または「エゴ」があるのだ。
だが、その狂気やエゴは、「愛情」と表裏一体とも言える。事実、ロド・サヤゲス監督は「盲目の老人は幼い少女にとても厳しい。彼女にサバイバル訓練をさせるのが日課だ。しかし同時に、彼女のことを大切に想い、心から愛している。この小さな少女が、彼の人生の全てなんだ」と語っている。老人は普段は少女を古びた屋敷に縛り付け、もはや監禁スレスレの生活をさせているものの、たまに養護施設で遊ばせることを容認している。確かに、少女への愛情もあり、それが彼の生きがいなのだと感じさせるところはあるのだ。
そんな「正しくなさ」と「確かな愛情」の両方を感じさせる盲目の老人に対して、侵入者たちにはまた別種の、何なら老人とは全く正反対と言える「正しくなさ」があった。そして、後半にはこの「正しくなさ」を抱えた者同士のバトルにおいて、守られるべき対象だった幼い少女が、ある「選択」をしていく様も見所になっていたのだ。
また、前作を観てない人もいるだろうから明言は避けておくが、「老人が幼い少女を何としてでも守ろうする」ことは、前作の中盤で「おぞましい事実」を露呈した老人の価値基準とは正反対であるようで、実は全く矛盾していないとも言える。だからこそ、狂気やエゴと、愛情はやはり紙一重なものなのだと思い知らさせるのだが……。
ともかく、「盲目の老人VS侵入者たちのバトル」というワンアイデアで楽しませるだけでなく、前作とは違う面白さを打ち出して、しかも「正しくなさ」のある世界の中で、「どのような選択をしていくのか」という、意外にも深く、そして普遍的なテーマも備えているのが、『ドント・ブリーズ2』なのだ。最後の「一言」も、それを象徴していると言えるだろう。ぜひ、エンドロール後のおまけまで、作り手からの恐怖の「おもてなし」を堪能してほしい。
・タイトル:『ドント・ブリーズ2』 (原題:DON’T BREATHE 2) ※「2」は全角数字
・日本公開表記: 8月13日(金)全国ロードショー
・監督:ロド・サヤゲス
・脚本:フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス
・製作:フェデ・アルバレス/サム・ライミ/ロブ・タパート
・出演:スティーヴン・ラング/ブレンダン・セクストン3世/マデリン・グレース
■オフィシャルサイト&SNS
・オフィシャルサイト:https://www.donburi-movie.jp
・オフィシャルTwitter:https://twitter.com/donburimoviejp
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事