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日刊サイゾー トップ  > イ・ラン「女は車を運転してるときに自由になる」
イ・ランの生命を担保にする(反)社会実験-1

きっかけは「女は車を運転してるときに自由になる」【連載第1回目イ・ラン インタビュー】

きっかけは「女は車を運転してるときに自由になる」【連載第1回目イ・ラン インタビュー】の画像1 
 韓国と日本、そして音楽・文学・映画などさまざまな表現分野を横断するアーティスト、イ・ラン。8月上旬には、待望の新曲「ある名前を持った人の一日を想像してみる」を、ザ・フォーク・クルセダーズが日本語カバーしたことで知られる朝鮮民主主義人民共和国の「イムジン河」の新録カバーとのカップリングでリリース。また、3rdアルバム『オオカミが現れた』の配信もスタートするなど、活躍の場をますます広げている。

 そんなイ・ランが、コロナ禍にできる新しい挑戦を試みるという趣旨の本連載。第0回となった前回では、タイトル『イ・ランの生命を担保にする(反)社会実験』、およびその“実験”に込められる彼女の真意について語られたとともに、「車の運転をしたことがない私が自動車免許を取るという“実験”について報告しようと考えています」という予告も明かされていた。

 連載第一回となる今回、果たしてどんな“実験結果”が報告されるのだろうか。

隣の家のお姉さんと“オープンカー”

──前回、取材した際に「今まさに教習所に通っている最中なんですけど」とお話いただきましたが、今はどんな状況ですか?

イ・ラン:今年の5月くらいから教習所に通い始めたのですが、実技試験に落ち続けていて、今週3回目を受けに行きます。本当にうんざりしますよ……。

──実技試験に苦戦しているのですね。

イ・ラン:はい。韓国の教習所は基本的に室内練習所しかないところが多いので、カーレースのゲームみたいにモニターを見ながら運転の練習をするんですけど、試験では実際の車に乗って運転しなきゃいけないから、デジタルとリアルのギャップがすごすぎてついていけないですよ。なので、友達に付き合ってもらって、自分の体を車に見立てて駐車のイメージトレーニングをしたりしています。

──そもそも、ランさんが自動車免許を取得しようと思い立ったのはどんなことがきっかけだったのですか?

イ・ラン:ジュンイチ(愛猫)が病気になってしまったことがきっかけだったと思います。私の家のお隣には仲良しのお姉さんが住んでいて、私が日本に出張するときにジュンイチの面倒を見てもらったりしていたのですが、去年末あたりからジュンイチの調子が悪くなったのを見て「救急車がわりに使ってほしい」と、車をくれたんです。

──え! じゃあランさんは今もうすでに車をお持ちなんですか?

イ・ラン:はい。その車はジュンイチよりもひとつ上の17歳なんですけど、鍵が壊れているので、誰でも入れる“オープンカー”なんです(笑)。

──そんなオープンカーあります!?

イ・ラン:みんなに“オープン”な車だから(笑)。とにかく、そういうことがあって教習所に通うことになりました。あとはさっきお話したお隣のお姉さんが、いつも「女は車を運転してるときに自由になる」と言っていたことがすごく気になっていて。

──「女は車を運転してるときに自由になる」。どんな意味なのでしょうか。

イ・ラン:その人は、車を運転すると「道路の上に自分だけの空間ができる」って言っていました。車の中は自分の空間だから、大きな声が出せるし、自分の好きな音楽をかけて歌ったりできるじゃないですか。私は、子どもの頃に運転しながら周りのドライバーに悪口を言っているお父さんをよく見ていて、すごくストレスを感じていたんですけど、お隣のお姉さんが運転しながら大声で誰かを罵倒している姿は、見ていてとっても気持ちいいんですよ。すごく印象的でした。それって多分、私が生きてきた世界では、大きな声を出して悪口を言ってる人がだいたい男性だったからだと思うんですよね。私が映画を作っていたときも、現場でスタッフを怒鳴って言うことを聞かせていたのは男性の監督だったし。反対に、そういうことをしている女性って、私はあまり見たことがなかったから、お隣のお姉さんの姿を見てスカッとしたのかも。

──家の中で大声を出すのも近隣住民に聞こえてしまうわけだし、女性に対して抑圧的な世の中だからこそ、本当に自分だけの空間である車内で大声を出すことによって「女は車を運転してるときに自由になる」のではないか、と。

イ・ラン:そうそう。とは言え、ドライバーが女性だと分かると喧嘩をふっかけてきたり、無視したりする人も多いみたいなので、やはり完全な自由はないと思いますね。

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