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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『パッチギ!』 国境の諍いを超えた愛(パワー)
宮下かな子と観るキネマのスタアたち第18話

2つの国の溝への葛藤をユーモラスに、爽快感抜群な演出で楽しませてくれる『パッチギ!』

国境の溝を放送禁止歌の「イムジン河」がつなぐ

 このような争いの絶えない日常の中、敵対している朝鮮学校に足を踏み入れた庸介は、フルートを演奏するキョンジャに一目惚れします。

 このヒロインキョンジャを演じる、沢尻エリカさんの可愛さったら!

 豊かな役者陣の中でもとびきり目がいくほど純情な雰囲気と持ち前の華やかさ。男達の血生臭さから、画面をパッと明るくさせるパワー。ほとんどのキャストが井筒監督からNGの連続だったという中、沢尻さんは何も指摘がなかったそう。庸介を見つめた後、少しだけ口角を上げてくるりと歩き出すタイミングだったり、ほんの少しの隙を見せる絶妙なバランスがたまらない! これは庸介が一目惚れするのも無理はありません。

 彼女が演奏していた曲、「イムジン河」のギターと朝鮮語の練習を始め、徐々に心の距離を縮めていきますが、それでも2人の間を隔てる大きな国境の溝はなかなか埋まりません。キョンジャの「あなたは韓国人になれる?」という言葉にハッとさせられる庸介。キョンジャとの進展と共に、朝鮮学校の生徒達との親交を深めていった庸介でしたが、それを良しと思わない周囲の人々も。

 どうしても乗り越えられない国境の溝に、葛藤する庸介。その架け橋となるのが、2人を繋いだ曲、「イムジン河」です。

 南北朝鮮に分断された悲しみを歌ったこの「イムジン河」は、当時日本では放送禁止の歌として扱われていて作品のクライマックスでも、庸介がラジオでこの曲を歌おうとして反対されるシーンがあります。それでも、大友康平さん演じるラジオディレクターが、「歌ったらアカン歌なんてないんだ!」と自由を主張し、庸平が精一杯歌う「イムジン河」が、ラジオからキョンジャたち家族のもとへ届きます。

 同じ時、京都の鴨川を挟んで争う対立した両者の中で、2つの国の間に産まれる新しい命の誕生の知らせも。それぞれの国境を越えた愛の力が、人々を突き動かしていく展開。この物語は、「戦争をもって戦争に反対する」と言った担任の言葉から始まりましたが、それはきっと違う。国境を乗り越えられるのは、ただ純粋な愛の力なのだと、頭突きされたように心に響くクライマックスです。

 人間味溢れる個性的なキャスト達の中、喧嘩、友情、差別問題、そして恋愛など、こんなにもさまざまな要素が詰め込まれた作品は、きっと唯一無二。国境の溝に葛藤する人々の思いに耳を傾けながらも、それらをユーモラスに、爽快感抜群な演出で楽しませてくれる『パッチギ!』。この熱いハートフルコメディ、熱い夏のお供に是非ご覧ください。

宮下かな子(俳優)

1995年7月14日、福島県生まれ。舞台『転校生』オーディションで抜擢され、その後も映画『ブレイブ -群青戦記-』(東宝)やドラマ『最愛』(TBS)、日本民放連盟賞ドラマ『チャンネルはそのまま!』(HTB)などに出演。現在「SOMPOケア」、「ソニー銀行」、「雪印メグミルク プルーンFe」、「コーエーテクモゲームス 三國志 覇道 」のCMに出演中。趣味は読書、イラストを描くこと。Twitter〈@miyashitakanako〉Instagram〈miya_kanako〉

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【アミューズWEBサイト公式プロフィール】

みやしたかなこ

最終更新:2023/02/22 11:36
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