2つの国の溝への葛藤をユーモラスに、爽快感抜群な演出で楽しませてくれる『パッチギ!』
#映画 #差別
加瀬亮はじめ個性強めなキャストが1つの物語で共存
物語の始まりは、女性客達がぎゅうぎゅうに詰めかけた京都の街中のジャズ喫茶。このライブでボーカルとして歌っているのは加瀬亮さん。茶髪のキノコ頭の髪型で、熱気のあまりに倒れ込んでしまう個性的な役柄を演じています。
冒頭の加瀬亮さんをはじめとした脇役を含めたキャスト陣が、今では揃えられないような豪華なメンバーであるのも今作の魅力のひとつ。主人公・庸介の友人、紀男役にキノコ頭の小出恵介さん、敵対する朝鮮学校の番長リ・アンソン役の高岡蒼佑さん、仲間のモトキ・バンホー役波岡一喜さん。同じく朝鮮学校の女生徒を演じる真木よう子さんは、癖のあるパーマヘアに小さな布マスク、短い眉毛でかなりパンチが効いていて、男性相手に強烈なビンタや飛び蹴りをかまします。その隣にいる江口のりこさんも、男子と混じって蹴りを入れるようなヤンキーで登場。眉毛の形が特徴的なヤンキー役桐谷健太さんや、主人公庸介にギターを教える男にオダギリジョーさん。ほかにもキムラ緑子さん光石研さんケンドーコバヤシさん余貴美子さん笹野高史さんなどなど、個性爆発な役者陣が大暴れ。
ずらり名前を見たらおわかり頂けるように、登場人物がそれぞれ濃いキャラクター性であるにも関わらず、1つの物語の中にきちんと共存し合っていて、尚且つこの昭和40年代の空気感にしっかり溶け込んでいるのです。
『パッチギ!』についてのインタビュー記事を色々と拝見したのですが、それぞれの役者さんたちがこの作品が転機だった、と語っている記事を多く目にしました。複数のキャストが数年後そうこたえる作品って、なかなかないと思います。4~5人で約7畳の部屋で雑魚寝しながら撮影に向かっていたとのことで、なんとも羨ましい青春。
今作は、修学旅行のバスを横転させる迫力満点のシーンから始まり、日常的に朝鮮学校との喧嘩争いが絶えず繰り返されます。普段、バイオレンス映画はあまり観ない私は、思わず目を背けてしまった痛々しい描写もしばしば。しかし、よくある不良映画でいうと、どちらかかボコボコにやられ勝敗が明らかなパターンが多いと思いますが、この物語では、勝敗の決着がつくことはありません。
日本人による在日コリアンへの差別があった社会背景を描いているので、両者との争いが何度あっても解決しないということ、或いは悪者はどちらでもない、という意味合いを、この高校生たちの喧嘩シーンにかけ合わせているように思います。
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