大東亜戦争と「コロナ戦」教訓はなぜ活かされないのか? また政府の誤解・楽観からくる判断ミスに翻弄される国民
#政治 #新型コロナウイルス #菅義偉
「西郷隆盛に似ている」誤解・楽観からくる判断ミス
大東亜戦争の指導者と現代の為政者(菅首相)に共通するもの、その1つに楽観的ということがある。
開戦後、早期和平を唱える者(近衛文麿、岡田啓介元首相)もいたが、日本軍が破竹の進撃を続けるうちに、そうした声はかき消されて、ズルズルと戦は長引いていった。戦争をすれば日本は必ず負ける、特に長期戦には耐えられないー昭和16年8月、総力戦研究所の研究結果の内容を東條英機陸相(後に首相)は聞いていた。
にもかからわず、東條は「あくまで机上の演習」「戦というものは、計画通りにいかない」と断定し、開戦を首相として迎えることになる。先の東條の言葉も「楽観的」と言えば、余りに楽観的であろう。総力戦研究所が突き付けた事実と論理を否定したとも言える。
戦争指導者の楽観は、終戦間際まで続き、日本政府はソ連を介して戦争を終結させようと動いていた。ソ連は、ヤルタ会談で対日参戦の密約を交わしていたにもかかわらず! 小野寺信ストックホルム駐在陸軍武官は、ソ連参戦の密約を知り「ソ連を通じての和平工作はもっとも悪い」と参謀本部に打電するが、ソ連の和平仲介に幻想を抱く者たちにより黙殺されるのだ。終戦時の首相・鈴木貫太郎などはソ連の指導者スターリンのことを「西郷隆盛に似ている」などと言い、期待していたという。これも、誤解・楽観からくる判断ミスだろう。
現代の日本政府も新型コロナワクチンに関して、楽観視していたと言える。イギリスなどは、2020年4月の段階で、ワクチンの開発・生産を加速するために、政界・学界・産業界が一体となり、ワクチン・タスクフォースを創設している。ワクチン接種の運営体制(接種人員の増員など)も2020年には構築された。これにより、ワクチン生産・調達・接種の迅速化が可能になったのだ。
日本はと言えば、ワクチン接種推進担当大臣に河野太郎氏が任命されたのが、2021年1月18日だった。イスラエルにおいては、ネタニヤフ首相が精力的に自ら動いて、ファイザー社などと交渉し、ワクチン確保に動いた(ファイザー社社長に数週間で17回も電話したという)。我らが菅首相はそこまでのことをやったのであろうか? ファイザー社社長はユダヤ系である。そうした縁もあり、イスラエルはワクチンを早期確保できたのかもしれないが、それでも、イスラエル首相は電話攻勢を前述のようにかけているのだ。日本はもっと早く、もっと手を回して、動く必要があったであろう。
菅首相は訪米しても、ファイザー社社長と電話会談しただけであった。日本のコロナ対策全般に言えることかもしれないが、動きは遅く、必要な時に必要なことをやらず、行き当たりばったりに動いているように感じる。戦争は、グランドデザイン(全体構想)を描き、それに対する適切な軍事戦略を立案することにより、勝利することができる。しかも、戦況が有利なうちにそれを推進することが重要である。ところが、大東亜戦争時の指導者はそれをせず、ズルズルと長期戦となり、ついには敗北した。
「コロナ戦」の政府指導部も、初期の段階で、それをしていなかったことが、敗北の理由であろう。そして「何が重要か、大切か」を見抜くことができなかったことも敗因だ。東京で五輪を開催するのならば、ワクチン調達と接種準備について、もっと早くから動いておくべきだったのだ。
菅首相は、官房長官時代のほうが情報がよくあがってきていた、最近はそれがないと嘆いたと言われるが、その発言が本当ならば、恐縮ながら、それだけで指導者失格である。情報が来ないから、自らとりに行くくらいの気構えが必要であるし、情報収集の制度を急ぎ構築する必要があるだろう。
また、報道によると、菅首相は常に不機嫌で、よく怒鳴り声を発することもあるという。これが本当か否かは分からないが、首相の覇気の無さというのは、会見を見ていても強く感じることである(それは何も、私だけの独りよがりなイメージではないだろう)。最早、それだけでも、敗軍の将としての条件は揃っている。
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