『関ジャム』大滝詠一「君は天然色」は、なぜ天然色なのか。もう色を点けることができないあの子
#関ジャム
“詞先”が日本独自のポップスを生む
いしわたりが松本にぶつけたのは、日本の音楽界全体に関する質問だった。
「詞先が激減する今の日本の音楽に思うことは?」
いしわたり曰く「日々の仕事のうち9割5分くらいは曲が先にある」そうだし、基本は曲先というのが多くの人の共通認識だ。“詞先アーティスト”としては槇原敬之とaikoが有名だが、この2人は珍しいタイプ。2015年6月13日放送『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)にゲスト出演した秋元康は「99%メロディーを先に選ぶ」と明かしていた。さて、松本の思いは?
「人類の歴史的観点から考えると、まず思いがあって、思いに続く言葉があって、それにメロディーを乗せてきた。そうやってポップスが生まれる歴史へと繋がってきた。日本では、外国の真似をしてサウンド重視。まずかっこいいサウンドを真似して、そこに合うメロディーをつけて、それから詞をつけてっていう逆の手順を踏んでいる。だから日本独自のものにならない」(松本)
詞先を考える上で、重要な要素となるのがタイアップだ。松本が作詞し、筒美京平が作曲した桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」は資生堂のCMソングとして最初からタイアップが決まっていた。資生堂が、まさに「セクシャルバイオレットNo.1」をタイトルに指定してきたのだ。先に詞のテーマが与えられ、そこから曲が出来上がっていくという工程。そういえば、この日の『関ジャム』に登場した曲はタイアップものが多くを占めていた。
松本の回答を受け、武部は感動する。
「日本の曲がビルボードのチャートで上がったり、それこそグラミー賞を獲ったりっていう未来を考えたら、やっぱり日本独自のポップスを作っていかないといけないと思うんですよね。そこを隆さんは憂いているなあって」(武部)
ビルボードを制した坂本九「上を向いて歩こう」(英題「SUKIYAKI」)を意識しての武部の発言だろう。思えば、はっぴいえんどは日本独自のロックを作ろうと奮闘したバンドだった。
充実の回だった。正直、2週に分けても良いテーマだったと思う。ただ、一方で「こんなにポンポン正解を出されて良かったのか?」という思いがないわけではない。特に、「赤いスイートピー」の「春色の汽車」のくだり。聴き手のせっかくの自由なイメージを制限してしまうと、音楽の力は半減する。リスナーそれぞれの解釈が否定されるのは野暮だ。リリースしたら、作品はもう受け手のものなのだから。2020年11月21日放送『まつもtoなかい ~マッチングな夜~』(フジテレビ系)に出演した甲本ヒロトの「若い世代は歌詞を聴きすぎ」という発言が、頭から妙に離れない。歌詞の答え合わせは是か非か、そこはいつも判断に迷う。
(文=寺西ジャジューカ)
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