高知県南国市が人気メーカー海洋堂を誘致! “宇宙船”は、シャッター商店街を救う“箱舟”となるか?
#地方創生 #海洋堂
入場無料は「諸刃の剣」、アジアのソフビブームが救世主となるか
スペースファクトリーが多くの来場者を獲得できている一因には、交流人口を増やすために入場料を無料とした市の方針も影響しているだろう。そして、関係者の施設への想いが伝わってくるような付加価値もある。
「見学通路などに展示されているフィギュアの中には、市が購入・リース契約を結んでいない、海洋堂さん(センムさん)のノリと心意気で無償貸与していただいているものがあり、そのおかげで『え?これが無料で見られるの?』という印象に繋がっていると考えています」
こういったワクワク感やスペシャル感は、地元の宝である子どもたちにも伝わる。海洋堂高知の今久保康夫さんは、「中には放課後、毎日のように通ってくる小学生の“定連”もいますよ」と顔をほころばせる。
「施設の周辺には、徒歩圏内に小学校が2つ、もう少し範囲を広げると高校が5つもあります。交流人口の増加だけでなく、地元の子どもたちのモノづくりのたまり場としても機能させたいですね」と展望を語った。
さらには、フィギュアを入口に、地元の子どもたちが地域産業に憧れを持ってくれたらという期待もある。
「南国市は、かつては2社の農機具メーカーを抱え、カシオ計算機の創業者の出身地でもあり、日本で唯一残る国産銃器メーカー『ミロク』などモノづくりのまちでもあります。彼らが地元で就職してくれれば、人口減や若手人材の流出も抑えられますから」(今久保さん)
ただその反面、入場料が無料となると、そこからは収益を得られないというデメリットもある。運営側である海洋堂高知としては、1階のソフビ生産工場の稼働率やワークショップの利用者数を上げる、グッズを多く買ってもらうなど、経営的な工夫が課題となる。
そこで、前出の上原さんが期待しているのが、台湾や香港、韓国、中国、タイなどアジア全体ではじまっている「ソフビブーム」だ。
「日本だと、ソフビのファンは30~40代と年齢層は比較的高めです。しかし今、台湾ではポップアート扱いで、イベントにも20代の若いカップルがデートで買いに来たりしています。コロナ騒動が落ち着けば、インバウンドもかなり期待できるのではと睨んでいます」
実は高知県には、明治「きのこの山」のキャラクター「きの山さん」のデザインや、いきものがかりベストアルバム『いきものばかり』のジャケットなどを手掛けたフィギュアイラストレーター・デハラユキノリ氏がいる。海洋堂とはコラボ商品を制作した経緯も。
「デハラさんとは飲み友だちでもあるので、スペースファクトリーを中心に、ソフビなどで何かコラボレーションできないか相談してみたいと思っているところです」(上原さん)
海洋堂誘致やスペースファクトリーの建設など、外部からのチャンスを逃さないように“瞬発力”でつかんできた南国市。懸案だった店舗開拓も、現在では県内の部署が連携して、不動産業者を招いての勉強会などを実施。地元の事業者とも関係性を深め、起業を目指す人に経験を積んでもらうための「チャレンジショップ」の整備も進めている。
スペースファクトリーを通じて市が目指しているのは、「オタクの聖地」ではなく「ものづくりの入口」だ。タイミングを優先しただけに、後から浮上する課題もあるが、高知人ならではのパワーと人のつながりでオリジナリティのある打開策を見つけるのかもしれない。ホビーの企業誘致による町おこしの先駆けとして、今後が期待される。
▶後編「タミヤ、アオシマ、ハセガワが公立小学校にも乗り出した「静岡市プラモデル化計画」!プラモの衰退が、技術者の劣化を招くと危機感も」
海洋堂SpaceFactoryなんこく
〒783-0004 高知県南国市大そね甲1623-3 TEL 088-864-6777
https://kaiyodo-sfn.jp
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