金メダルの入江聖奈「引退して就職します」 女子ボクシングの厳しい現状
#ボクシング #東京オリンピック
日本人選手のメダルラッシュが続く東京五輪で、またもや初の快挙が生まれた。女子ボクシングフェザー級の入江聖奈が金メダルを獲得すると、フライ級の並木月海が銅メダルを獲得。しかし入江は試合後、ボクシングは大学でやめて就職する意志を表明した。これはいったいどういうことなのか?
女子ボクシングが五輪に採用されたのは2012年のロンドン五輪。過去2大会では日本選手は出場しておらず、初出場でいきなり2個のメダルを獲得する大躍進となった。
「日本の女子ボクシングといえば、南海キャンディーズのしずちゃんが挑戦したのが一番のトピックでしょう。しずちゃんは芸人仲間に連れられてボクシングジムに行ったところ、その面白さに目覚めて本格的にボクシングを開始。ミドル級での出場を目指しましたが、出場は叶いませんでした」(女性芸能誌記者)
しずちゃんの挑戦から9年の時が経ち、初出場の五輪で見事な結果を残した日本女子選手たち。プロの世界では井上尚弥が快進撃を続け、ボクシング界は大いに盛り上がっているが、女子選手たちを取り巻く状況は、決して恵まれたものではない。
「ボクシングジムには“ボクササイズ”でやって来る女性はたくさんいますが、本格的に競技をやるとなると話はまったく別です。女子はとにかくすそ野が狭いので、まず練習相手や試合相手を探すのが大変。ボクシングは大きなケガをすることもある危険な競技ですが、明らかにレベルが違う選手と試合をする可能性もあります。
迫力やテクニックでどうしても男子より見劣りするので、プロライセンスを取ってもボクシングだけで食べていくのはまず無理ですし、競技人口が少ないので指導者になる道も無い。たまにメディアで取り上げられても、『美人ボクサー』『ママさんボクサー』など、ボクシング以外のことで取り上げられることが多いのが現状です」(週刊誌運動部記者)
野球やサッカーなど、男子との人気格差に悩むスポーツは多いが、それがとりわけ顕著なのがボクシングだという。そして、ボクシング界が“一枚岩”ではないという現実もあるという。
「ボクシングはボディ(=お腹)を叩くのが基本なので、年輩の男性指導者の中には『ボディを叩いたら子どもが産めなくなるかもしれない。女性がやるなんてとんでもない』と言う人が少なからず存在します。バストへの打撃の影響も男性より大きい可能性があり、医学的見地からリングに上がることを懸念する意見もある。親御さんにとっては、娘が顔を殴られることにも強烈に抵抗感があるでしょうし、競技人口が飛躍的に増えることは考えられません」(ボクシング界に詳しいスポーツライター)
さらなる厳しい事情もある。
「そもそもボクシングは男子共々、東京五輪から除外されかけました。これは国際ボクシング協会(AIBA)の組織統治が問題視されたものですが、ボクシングと同じく歴史があるレスリングも除外されかけた経緯があり、伝統競技といえども安心は出来ない。そうなると、世界的にも競技人口が少ない女子が切り捨てられる可能性はあります」(同上)
入江は希望の就職先として「ゲームが好きなのでゲーム会社」と語っている。彼女なら最高に面白いボクシングゲームが作れそうだが、“第2の入江”は果たしてもう出ないのだろうか……。
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