映画『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』の邦題が「アリ」だった理由
#映画
ちゃんとしているパニック描写とちょっとトンデモな展開
その邦題のことは置いておいて、本編はちゃんとしているパニック映画の良作だ。『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』 というワンシチュエーションで面白くできそうなことは全部やり切っている、それ一本勝負な内容とも言えるし、その意味でもわりと「アリ」な邦題だ。はっきり言って、原題の「Horizon Line」よりも、こっちの方が内容に合っている。
邦題通りなので改めて言うまでもないが、本作のあらすじは「友人の結婚式で久しぶりに元カレに再会し、偶然にも結婚式場となる孤島まで一緒に遊覧飛行をすることになるが、そこでパイロットが心臓発作を起こして亡くなってしまう」のというもの。操縦経験がほとんどない2人は機体を飛ばすだけでも精一杯であり、しかも自動操縦やGPSも故障し、通信も途絶え、着陸方法もわからない。さらに、追い討ちをかけるように乱気流も迫ってくるのだ。
その後にどうなるのかは秘密にしておこう。危機を回避する方法はしっかりとしたロジックがあるし、かと思えば「ええっ!? そんなことするの?」な展開も訪れたりする。リアルとトンデモなバランスがとても良く、しっかりハラハラドキドキできる。
また、このシチュエーションに合う見事なロケーションと、撮影が美しいことも本作の長所。それもそのはず、サメ映画の快作『ロスト・バケーション』のジャウム・コレット=セラ監督が製作総指揮にクレジットされており、同作の撮影監督だったフラビオ・マルティネス・ラビアーノも登板している。水準以上の内容になったのは、間違いなく優秀なスタッフと、キャストたちの熱演のおかげだ。
良くできている元カレとの描写
もうひとつ良くできているのは、オープニングの描写。ここで「彼との生活と自分の仕事のどちらを優先するのか」という主人公の選択が、切なく描かれているのだ。「もう腹は決めているが、お互いにジョークを言ってはぐらかして、なかなか本当のことを言い出せない……」というのは「別れ際のカップルあるある」なのかもしれない。
そんな彼らが気まずい再会を果たし、そして命を落としかねないパニック的状況で、どのような成長を遂げ、そして関係が変化していくのか?という流れにもなかなか見応えがある。低予算かつ小規模な映画を面白くするための工夫は、十分に凝らされていると言っていいだろう。
そんなわけで、邦題の話題に釣られて観に行ったら意外とハラハラドキドキして楽しめた、デートで観れば恋人との関係も見つめなおせて良かったと思えるかもしれない内容だ。過度の期待は禁物だが、92分の上映時間でサクッと観られる小品として、ぜひ『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』 を楽しんでみてほしい。
『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件 』
製作:ジャウム・コレット=セラ(『ロスト・バケーション』)監督:ミカエル・マルシメーン 出演:アリソン・ウィリアムズ、アレクサンダー・ドレイマン 配給:ギャガ
【2020年/スウェーデン・アメリカ/シネスコ/5.1chデジタル/92分/原題:HORIZON LINE /字幕翻訳:牧野 琴子】
8月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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