Aマッソ加納「新しいお笑いをやりたくてこの番組やってんのよ」…裏切りのオチ
#テレビ日記
井上裕介(NON STYLE)「……まだ仕掛けあんの?」
伝えるのが難しいといえば、『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)もそうだ。報道番組の体裁をとりながら、実質的にコント番組のようなこの番組。くりぃむしちゅーの有田哲平(番組内では「アリタ哲平」名義)をはじめとした出演者は台本にそって番組を進めていくが、ゲストの芸人は台本を知らされていない。そんな状況に芸人たちが振り回されるさまを楽しむ番組だ(こういう説明も野暮だけど)。
そんな『脱力タイムズ』だけれど、30日の放送ではさらに捻りが加えられていた。この日の芸人ゲストはNON STYLEの井上裕介。今回の中心テーマは日本政府の新型コロナウイルス感染症をめぐる政策を検証するという、実に報道番組らしいものだ。井上も持続化給付金などこれまでの日本政府の施策を、フリップを使って真面目に解説する。
が、井上の解説が始まると徐々に音が絞られ、有田の顔がアップになっていく。別に録音された有田の”心の声”がそこに重なる。
「ん…? いやまぁ、思い切ってこのテーマでやったけどさ…。よく考えたら、給付金の話って今さらやるべきかね。この番組でやるべきかこれ? まぁいいや…」
当然、井上には聞こえていない。その後も、海外のコロナ対策を取り上げたVTRが流れるはずが、井上と親交がある後輩芸人や知人女性などからプライベートを“暴露”される流れとなり、井上が「またこのパターンや」などと反応。実際には、全然違うパターンに巻き込まれているのだけれど。
井上は“暴露”映像に「おーい、言うな」と笑いながらツッコミを入れる。そんな井上の姿に、有田が心の声で「井上ってさ、なんか暴露されてるけどさ、なんか、すっげー喜んでるよね。ニヤついて。『やめろー』とか言って。ホントはやってほしいんだよなぁ。なんか説得力がないんだよ。もっと真顔で『やめろ』って言えばいいのに」など言う。
この日は終始この調子で、「いつものパターン」だと思っている井上の言動を、編集で重ねられた有田の心の声が上書きしていく。しまいには、ゲストの白石聖もドラマの告知を心の声で行った(番宣の入れ方に定評のある同番組だけれど、なかでも今回の仕掛けは屈指だったと思う)。
「はい、OKです」
スタッフの声で、番組は収録終了後のトークへ。収録を振り返る井上に対し、有田は「あとはオンエアを楽しみにしててください」と微かに笑みを浮かべた。その言葉にしばし絶句した井上は、何かに気づいたかのような顔で言うのだった。
「……まだ仕掛けあんの?」
過去2回、井上が同番組に出演した際は、スタジオの外に彼が追いやられて終わるというオチがあった。今回はそういった流れがなく、井上自身、「今回どこで外に出るんやろうってずっと思いながら……」と振り返っていたが、実際には、スタジオの内にいながらにして外に締め出されていた格好だ。
いつものように『脱力タイムズ』は、テレビ番組の仕組みや文脈を読み解くリテラシーを教えてくれる。そういう意味では教養番組なのかもしれない。いや、もちろん報道番組だけど。
あと、コロナをめぐる井上の言葉を画面のうえで有田の声が上書きしていくさまは、オリンピックの話題がコロナの話題を上書きしていくような現状を暗喩しているようにも見えるけれど――みたいなひと言は、ちょっと番組を上書きしすぎかもしれない。
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