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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 小林賢太郎、五輪ディレクター解任劇と批判

小林賢太郎、五輪ディレクター解任劇と批判であらためて考える“芸人”の社会での位置

若手芸人がおちいる小手先の笑い

 皆さんは小林賢太郎さんが解任された理由は、1998年に発売された若手芸人を紹介するビデオソフトの中で、ホロコーストをネタにしたコントがあった為という認識だろうか?

 確かにホロコーストを言う部分はあったが、それ自体がネタというわけでは無く、ネタの中の一文にその言葉が入っていたのだ。ではなぜ、その一言を入れてしまったのか。

 小林さん本人は「思うように人を笑わせられなくて、浅はかに人の気を引こうとしていたころだと思います」と。

 この言葉は芸人なら誰しもが共感する。人を笑わせたいけど、ネタがちゃんと伝わらない。頭で思い描いたようにお客さんが笑ってくれない。そんな時期が必ず来るのだ。そうするとネタで笑わないなら小手先で笑わせようとし、人を傷つけるイジリや毒舌、下ネタ、時には小林さんのように、本来笑えないような事を笑えるように変えてでも笑いが欲しくなるのだ。

 そうやってもがいた時期を乗り越えて、お客さんにとっても、芸人側にとっても、「平和な笑いが1番だ、という事に気づく。そしてライブを飛び出し、最もクリーンなテレビの世界へ羽ばたいていくのだ。

 ラーメンズは96年結成、ビデオが出たのは結成2年目の98年。若手中の若手だ。しかも年齢は25歳。芸人として尖っていて、ほかの芸人との差別化を図ろうとしている時期だろう。

 ただ、若手だからと言って、ホロコーストを入れるのは仕方が無いということではない。

 笑いは常に時代と共に変化している。僕らが子供の頃は、バラエティ番組で女性の裸が映ることなどしょっちゅうあった。

 忘れもしない、志村けんさんのバカ殿では何人もの女性を裸にし、胸の部分に絵を書いてうつ伏せにする。そしてその女性たちで神経衰弱を行っていた。今のテレビでは絶対にあり得ない企画。ただその当時は、それが審査を通過し、お茶の間に流れて笑いとなっていたのだ。

 それと同じで、ラーメンズがホロコーストをネタに入れたのは、その時代に多少なりとも笑いになったからだ。もし19年にラーメンズが結成されていたら、21年にそんなネタをやろうなど微塵も思わないだろう。

 1918年に創刊されたイスラエルの歴史ある新聞社が、今回の件で小林さんを擁護していると、ある記事で読んだ。それによれば、国内でもホロコーストに対するジョークはある。もちろんOKというわけではないが、「まともなユダヤ人は98年の冗談など気にしないと声を上げる必要がある」さらには「東京オリンピックの開会式ディレクターを解雇するべきではない」とまで言っている。

 ネット上にはこの問題をさらに広げて、ラーメンズのネタに今となっては不謹慎とされるような文言があるとたたく人がいるが、それに関してはある一時代にそういうネタがあっただけで、ラーメンズの大半のネタはそういうものではない。

 解任された小林さんの文章にも「その後、自分でも良くないと思い、考えを改め、人を傷つけない笑いを目指すようになっていきました」と書いてある。

 となると先述したカズレーザーさんの「過去を後悔し、今はこんな事をしているとアピールする」という部分は、クリアしているのではないだろうか。

 09年まではラーメンズとして単独公演をし、その後2人での活動は無くなってしまったが2人とも人を傷つけない笑いを体現していた。

 カズレーザーさんは小林さんの件についてこう言っている。「超えてはいけないラインを越えた」「ウケたとて許されないこと」と。

 まともなユダヤ人が気にしない事を誰が許さないのだろうか。人を傷つけない笑いを目指していた小林さんが、少し不憫に思えた。

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