トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 特撮へのオマージュ満載!カナダ映画『サイコ・ゴアマン』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.646

最凶宇宙人と性悪少女のほっこり系SFドラマ!“東映特撮”へのオマージュ『サイコ・ゴアマン』

最凶宇宙人と性悪少女のほっこり系SFドラマ!東映特撮へのオマージュ『サイコ・ゴアマン』の画像1
藤子・F・不二雄ワールドをブラック風味にしたSF映画『サイコ・ゴアマン』。

 サイコーにゴキゲンなSF映画が、カナダからやってきた。その名は『サイコ・ゴアマン』(原題『PG(PSYCHO GOREMAN)』)。笑いとバイオレンスと社会風刺が、絶妙にブレンドされたエンタメ作品だ。主人公は田舎町で暮らす幼い兄妹。ある日、兄妹は奇妙な宇宙人と遭遇し、日常からはみだした刺激的な日々が始まるというもの。藤子・F・不二雄ワールドやスピルバーグ監督の『E.T.』(1982)などを思わせるハートウォーミングな作品かと思いきや、宇宙人は凶悪モンスターで、兄をアゴで使う妹は性悪少女だったことから、物語は予測できない方向へと転がっていく。

 性悪少女の名前はミミ(ニタ=ジョゼ・ハンナ)。兄のルーク(オーウェン・マイヤー)は優しい性格なので、妹に逆らうことができず、奴隷同然の扱いを受けている。この兄妹の最近のお気に入りの遊びは「クレイジーボール」。2人が考えたオリジナルのボールゲームだが、このゲームに負けたルークは、ミミから庭の穴掘りを命じられる。庭の底には赤く光る宝石が埋まっており、当然のようにこの宝石はミミのものに。だが、この宝石は宇宙を滅亡させるほどの力を持つ凶悪モンスターを封印していた一種のソウルジェムだったのだ。

 封印を解かれた宇宙最凶のモンスターに遭遇したミミは、彼を「サイコ・ゴアマン」と名付け、無謀にも遊び相手にしてしまう。こんなクソガキは捻り潰してやりたいサイコ・ゴアマンだったが、ジェムの持ち主の命令には逆らうことができない。ルークともども、サイコ・ゴアマンも9歳の少女にさんざん振り回されるハメとなる。

 ミミたちが遊んでいるうちに、通りがかりの子どもはサイコ・ゴアマンの目から発せられる破壊光線によって瞬殺、駆けつけた警察官はゾンビコップにさせられ、さらにミミが片思いしている近所の少年・アラスターはトホホな姿に変えられてしまう。最高に刺激的な遊び仲間を見つけ、小躍りするミミだった。

 こんなおかしな映画を撮ったのは、カナダ在住のスティーヴン・コスタンスキ監督。自主映画『マンボーグ』(2011)は低予算映画ながら、手作り感たっぷりな特撮シーンが話題となり、日本でも13年に劇場公開されている。本作も見るからに低予算映画だが、コスタンスキ監督の特撮愛が全編から溢れ出ている。

 コスタンスキ監督は、『ターミネーター2』(1991)や『マスターズ 超空の覇者』(87)などのちょい懐かしいSF映画が大好き。日本の「東映特撮ヒーロー」も大のお気に入りらしい。劇中にはサイコ・ゴアマンのほかにも、「宇宙刑事」シリーズに出てきそうな被り物の怪人たちがわらわらと登場する。怪人のひとり・ウィッチマスターの声に、園子温監督の実録ゴアムービー『冷たい熱帯魚』(11)での怪演ぶりで知られる女優・黒沢あすかをわざわざ起用するなど、日本のサブカルも大好物であることがうかがえる。

123
ページ上部へ戻る

配給映画