善意か悪意か分からない情報で溢れた世界での“生”を肯定的に捉える『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
#石井裕也 #池松壮亮 #夜空はいつでも最高密度の青色だ #石橋静香 #最果タヒ
みっともない姿でも人生は続いていく…
東京で生活しながらも、東京の街並みを「嫌い」と断言する2人。その東京の街並みが、作品中、渋谷・新宿を中心に映し出されます。沢山の人人人、沢山の話し声、笑い声。光るネオン。サイレンの赤い光。携帯から流れる緊急地震速報や、電車の人身事故。今日も何処かで誰かの命が失われていて、それらに対して無関心でいられない不器用な2人。
2人が立ち止まっていても常に世界は動いていて、何となく疎外感を感じさせながらも、それでも彼女達がその世界の一部であると示す演出が散りばめられています。
例えば、誰かが工場の流れ作業で作ったお弁当を、病院で働く美香が食べていて、工事現場で働く慎二達も食べていたり。慎二が家で吸った煙草の赤い火の灯りが、東京の夜空に点滅する赤い光に繋がる演出だったり。人間知らず知らずのうちに、しっかり世界と繋がっていて、決して孤独ではないからね、と、優しくなだめているよう。それまで冷たく感じていた東京の光や人の流れに、そこに1人ひとりの物語があるんだとあたたかく感じられるんです。
新型コロナウイルスが全世界に広がりを見せた今。嘘か本当か、善意か悪意か分からない情報で世界は溢れていて、それぞれが未来への不安を感じながら生きていると思います。
それでも決して「今」から逃げ出さず、みっともない姿でも、カッコ悪くても、誰も見ていなくても、「ざまぁみやがれ。私生きてるぞ」って前に進めたなら、それはきっと素敵な姿なんじゃないかなぁと思います。その時、大切な誰かが傍にいてくれたなら、それはもう最高なんじゃないかなぁと思います。
そう感じさせてくれる作品です。今の世の中を生きる私たちに語りかけてくれるメッセージが、沢山詰まった作品なのではないかと思いますので、涼しくお家で過ごすお供に、是非。
暑い日が続いていますので、どうか熱中症などに充分お気をつけてお過ごしください。
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