“かた焼きそば名門校”出身の料理人による天衣無縫のあんかけと病みつき揚げ麺
#かた焼きそば #五反田
白き羽衣を纏いた天使のようなあんかけ
ここで、恒例のメニュー確認。
亜細亜のかた焼きそばは「什錦炸麵」と記載されている。什錦とは「多種類の材料を取り合わせた、盛り合わせ」という意味。五目チャーハンや五目焼きそばの「五目」の部分がいわゆる「什錦」という認識で間違いないだろう。炸麵は「揚げた麵」という意味だ。「炸」が「炒」に変われば、ご存じの「炒麵」こと焼きそばとなるのだが、実のところ厳密には統一されていない。
価格帯は、いわゆる町中華と高級中華のちょうど中間といった位置付けだろうか。普段使いするには私のフトコロ事情では厳しいが、少し背伸びしたい日のかた焼きそばとして選ぶには最適のお店なのだ。
「いいかい学生さん、かた焼きそばをな、亜細亜のかた焼きそばをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ」
と、常に心では思っているが、なかなかどうして厳しい現実。いつかその境地に達することができますように、と願いながらいただくことにしよう。
天衣無縫。このかた焼きそばを一言で例えるなら、この四字熟語だろう。
具材は豚肉、海老、イカ、きくらげ、白菜、ニンジンにタケノコ。じっくりと、ギリギリのタイミングで揚げられた小麦色の中太麺。秘伝のスープを使い、塩を中心とした調味料で仕上げたきめ細やかなあんかけは、白き羽衣を纏いた天使のようだ。もちろん、それらをすべて受け止める皿の美しさも忘れてはならない。
これほどまでのかた焼きそばが駅前で、誰もが平等に食べることができる。これだけのために五反田に行く価値は十二分にある。
一見、これだけ具沢山だと味がぼやけてしまいがちだが、見事に調和が取れていて、ひとつひとつの具材の美味しさも感じ取れる。ごまかしが効かないシンプルな味付けの向こう側に、料理人の卓越した技術がキラリと光る。
揚げ麵も是非注目してもらいたい。なぜかはわからないが、異常に美味しいのだ。以前、仕事終わりに亜細亜のテイクアウト用かた焼きそばをいただいたことがあるのだが、揚げ麵だけをわざと余らせて、その後、数日かけてポキポキと食べていたくらい、夢中にさせる何かが秘められている。この亜細亜の揚げ麵だけの、ベビースター的なお菓子があれば、家に常備しておきたいくらいだ。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が幾度となく発令され、“平穏な日”というものがほとんどない2021年。マスクは今も外せないでいる。この連載をきっかけに少しでもお店に足を運んでくれたら、これ以上の幸せはない。
食も人類にとって大切な文化、失ってから気づくのでは遅すぎる。
<INFO>
・亜細亜
住所:東京都品川区東五反田1-13-9
営業時間:11:30~14:00、17:30~22:30(L.O.21:45)
※緊急事態宣言中は時間変更あり
定休日:木曜
Twitter:@asia_gotanda
Instagram:asia_gotanda
<連載「かた焼きそばのフィロソフィー」の過去回>
第1回:「海老天ベンツも潜む圧倒的な情報量の“揚げ日本そば”スタイル」
第2回:「中野坂上にも“夢と魔法の王国”があった! 豚レバーとピリ辛餡が刺激的な『ミッキー』のかた焼きそば」
第3回:「椎茸・ザ ・ボンバーの一点突破! “映え”だけじゃない極端かた焼きそばの滋味と享楽」
第4回:「インド、アメリカ、中国が同盟を結んだ! フォークで食べる常識破りのジャンクかた焼きそば」
第5回:「創業90年の町中華で味わう極上“アンビエント”かた焼きそばの宇宙と無常観」
第6回:「まるでかた焼きそばのサラダ! 立川で100年以上続く福来軒の懐かしくて新しい逸品」
第7回:「エキゾチックなタイ版かた焼きそば“あんかけのスコール”で微笑みがあふれ出す!」
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