ノブコブ吉村は“傭兵”に最も向かない芸人? 「それすらも盛っちゃってるから、人格すらも」
#吉村崇 #あちこちオードリー
川島、小峠、澤部とは違い、生き様で見せるタイプ
そんな吉村に対し、少なくとも同期の若林は一目置いているようだ。わかりやすい例で言うと、『嵐にしやがれ!』(日本テレビ系)の進行役として吉村は長年重用されたが、若林は準レギュラーの座を短期間で失った。吉村は稀に輝く。
徳井 「『はねるのトびら』(フジテレビ系)のゲストがウチらで、俺は全然ダメだったんだけど、吉村は噴火するように頑張ってて、あのときは凄かったね。虹色! 虹色吉村」
若林 「俺も“虹色吉村”結構見てんのよ。俺、『こんな虹色の人が同期でいるんだ』と思ってびっくりして。生放送で1分だけネタやるみたいなときに脇のシーツを畳むやつとか。こんなに自分の空気にするエネルギーというか。ライブとかでも吉村君が中心になるの」
共演の機会が多い若林と吉村。虹を見たからこそ、若林は吉村を頼りにする。そして、我々も“虹色吉村”を数度見たことがあるはずだ。『今田×東野のカリギュラ』(Amazon Prime Video)の「人間火の鳥コンテスト」における男気と、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の「生中継に現れたヤバめ素人のさばきで芸人の力量丸わかり説」で見せた腕は、彼の代表作である。
若林 「自分では心当たりあんの? 虹が出現する回数が減ったなっていうのは」
みちょぱ 「最近出たのはいつですか?」
吉村 「1番最近、虹が出たのはいつだろうなあ……」
まるで、気象観測番組のような会話。しかし、このやり取りで浮かび上がったのは吉村の人間味だ。
改めて、吉村が言うところの“傭兵”とは何なのかを確認したい。芸能界に君臨する大名らの番組に馳せ参じ、その場その場の空気を読み、求められた仕事を遂行する。これを繰り返すうちに、彼は“傭兵しぐさ”が体に染みついてしまった。
「私、催眠術かかってないのに手が開かなかったんですよ、1回。辛いもの食べて『甘いよ』って言われて辛かったんだから。ずーっと辛いまま『甘い』って言ったんだから、私は。こういう戦い方もあんのよ!」(吉村)
今回もそうだ。何回促されてもまともに素を出さず、組み合おうとしなかった吉村。しかし、徳井たちに詰められて最後の最後で遂に絞り出した。
「(本当の自分が)バレたくないというか。それすらも盛っちゃってるから、人格すらも。でも本当に向いてないと思う、お笑いに。おそらくね? これ以上聞かないで(笑)!」(吉村)
周囲に合わせ、空気に飲まれ、顔色を窺い続けるうちに自分の本音がわからなくなる。心の内を悟られたくないから、自分の話をしたがらない。彼が嫌々放った一瞬の本音に共感してしまった。ソツなく立ち回っているが、結局、1番人間臭かったのは吉村だったというオチだ。
川島、小峠、澤部といった器用な芸人と比べ、本来は生き様で見せるタイプの吉村は、実は最も傭兵に向いていない気がする。盛って繕うわりに人間味が露呈してしまうほころびこそ、彼の魅力だと思うのだ。生き様自体が本領なのに、本音を出す生き方を選べない。その皮肉こそ、吉村の人間味。しかし、それら全てを丸出しにすると傭兵として終わるというジレンマも孕んでいる。この救いのなさにさえ、共感してしまった。
ちなみに、『あちこちオードリー』次回のゲストは陣内智則と麒麟・川島の2人だ。なんて残酷な。
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