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莫大な中国の貯蓄の行方を狙う米国の金融機関

莫大な中国の貯蓄の行方は?  中国市場進出を狙う米国の金融機関の画像1
バイデン大統領の警告もなんのその?(写真/GettyImages)

 中国が2020年6月30に香港の反体制活動を禁じる「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法(国安法)」を施行してから1年が経った。反政府活動は厳しく取り締まっても、世界有数の金融都市、香港の機能は引き続き維持したいのが中国政府の本音だ。

 そんな中国に対し、バイデン米政権は7月16日、香港に進出する米企業などに対し、データ流出など事業運営上のリスクが高まっている等と警告する文書 を発表した。

 警告は国務省、財務省、商務省と国土安全保障省の4省が連名で出しており、香港でビジネス展開する米国を始めとする外国企業に対し、「企業は、中国本土で直面しているリスクが、香港でもますます高まっていることを認識する必要がある。国安法および中国と香港の当局による措置は、従業員、財務、法令遵守、評判、および業務に悪影響を及ぼす可能性がある」と同法施行後の香港のビジネス環境の変化に強い懸念を示している。その上で、香港でビジネスを展開する上での注意すべき点を幾つか列挙した(以下抜粋)。

(1)香港で活動する企業、およびその企業に代わってビジネスを行う個人や企業は、国安法を含む香港の法律の対象となる。米国人1名を含む外国人が、同法基づいて逮捕された。
(2)企業は、令状のない電子監視や、企業や顧客のデータを当局に引き渡すことに伴うリスクに直面している。
(3)自由で開かれた報道に依存する企業は、情報へのアクセスが制限される可能性がある。

中国政府猛反発 中国進出を狙う米金融機関

 こうした指摘に中国政府は猛反発。人口14億の市場を擁し、世界第2位の経済大国となった中国への市場進出を狙う米ウォール街の金融機関も、今回のバイデン政権の警告を内心「余計な政府の介入だ」(在ニューヨーク米国人投資家)と、苦々しく捉える。

 背景には強大な中国の貯蓄市場の存在がある。中国の金融セクターが外国資本による企業所有ルールを緩和したことを受け、米国の金融機関は中国国内の未開拓の貯蓄市場から利益を得るための未だ経験したことのない千載一遇の機会を狙っている。ブラックロックとゴールドマン・サックスは既に、それぞれ中国建設銀行と中国工商銀行と資産運用の分野で提携しており、その他の欧米の資産運用会社も追随することは必至だ。

 真の狙いは銀行口座と不動産で休眠状態になっている莫大な中国の貯蓄だ。世界銀行によると2019年の中国の貯蓄率は米国の18.2%と比較して44%と高い 。ウォール街は洗練された資産運用商品を持たない中国の金融機関を商品の販売チャンネルとして利用すれば、このまたとないチャンスをものにできると考えている。また、米国の金融機関は中国へのアクセスが高まることで世界的に低利回りの金融環境下、中国国外のクライアントに、「中国」という成長率の高い新たな投資商品を供給できると確信している。「単純に言ってしまえば、これは巨大でほぼ未開拓な市場進出機会だ」と、ある香港在住の米国人金融マンは、自社の中国進出について語る。

 しかし、ウォール街が中国市場へ向ける熱い眼差しはバイデン政権による「(中国との)関与政策の時代は終わった」という宣言とは全く相容れないものである。特に米国の金融機関は米中関係悪化に伴い、著名な対中国タカ派政治家が政治の中枢を担うことによってより厳しい視線にさらされている。

 米国のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)は先日、ウォール街と中国の関係を「国の経済にとって自殺行為に等しい」と表現した。ここまで大げさではないものの、国家安全保障問題担当大統領補佐官であるジェイク・サリバンは2月にワシントンで浸透している考え方を如実に示すように、ホワイトハウスの 貿易政策に関してコメントする中で、バイデン政権の「優先課題は、中国におけるゴールドマン・サックスのアクセスを高めることではない」と発言している。

 欧米各国が、アジアの金融都市、香港で政治的反体制派への弾圧を続ける中国政府を批判する中で、香港に拠点を置く米国の資産運用会社がどのような態度を取っているかについては、視点の違いが顕著に表れている。

 米国の金融機関の視点から見れば、中国市場は無視するには大きすぎる市場であり、彼らは単純に他の業界の先駆者達の進んだ道を辿っていると考えている節がある。香港在住のある米国人ファンドマネージャーは「米国と中国は実は、経済的に非常に似通っている。金融機関は政治的な雑音に惑わされない」とまで言い切った。

 ワシントンの喧騒から遠く離れた香港の米国金融企業は、中国に対する追加の制裁措置の影響を受ける可能性は低く、イランやスーダンに対して行われているような全面的な制裁が課されない限り(米国政府データによると2021年5月末時点で1兆780億ドルの米国債を保有する中国に対してこのような制裁が課される可能性は極めて低い)十分対応可能な状況である、と判断する傾向にある。

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